HOME ニュース一覧 必要経費該当性に争いがある支出は納税者側に相応の立証責任

税ニュース

必要経費該当性に争いがある支出は納税者側に相応の立証責任

 必要経費に係る証拠書類が火災で焼失したことを背景に地代家賃及び建物の修繕費等の必要経費該当性の判断が争われた控訴審で大阪高裁(田中俊文裁判長)は、必要経費該当性に争いのある支出については納税者側が支出の具体的な内容を明らかにし、その必要経費該当性について相応の立証をする必要があることから、その支出が必要経費に該当しないことが推認され、火災により証拠書類が消滅したと認めることもできないと指摘して、原審と同様、各更正処分は適法と判示して、納税者側の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、納税者がした所得税の確定申告に対して、原処分庁が必要経費性等を否認して更正処分の上、過少申告加算税、重加算税の賦課決定処分をしてきたことから、納税者側がその取消しを求めて提訴したところ、原審の大阪地裁(平成26年(行ウ)第298号)が納税者側の請求をいずれも棄却したため、原判決の取消しを求めて納税者側が提訴したという事案である。

 納税者側は控訴審で、必要経費該当性について争いがある支出について、納税者側がその支出の具体的内容を明らかにし、その必要経費性について相当の立証をする必要があり、納税者側がこれをしない場合にはその支出が必要経費に該当しないことが事実上推定されるとするのは不当であるという主張を補足的に展開した。

 というのも、納税者側の支配領域外の出来事である火災によって証拠書類が失われて立証責任を転換するための前提を欠くことから、事実上の推定が働く余地はないということが背景にあったためのようだ。

 これに対して控訴審は、原審と同様、更正処分はいずれも適法であると判断できるとした上で、必要経費該当性につき争いのある支出については、納税者側においてその支出の具体的内容を明らかにし、必要経費該当性について相応の立証をする必要があるというべきであと指摘。そのため、納税者がこれを行わない場合には、その支出が必要経費に該当しないことが推認されると判断した。

 また、事実認定から、火災により証拠書類が消失したと認めることはできないとも指摘して、納税者側の補足的主張を斥けた。さらに、給与や貸倒金も架空のものと認定、重加算税の要件を満たすことは原審と同様に考えられると判示して、納税者側の請求を斥けている。
 
     (2018.05.18大阪高裁判決、平成29年(行コ)第195号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

消費増税による負担は20~40代女性を直撃~博報堂

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2019/img/img_sozoku_01_s.jpg
 必要経費に係る証拠書類が火災で焼失したことを背景に地代家賃及び建物の修繕費等の必要経費該当性の判断が争われた控訴審で大阪高裁(田中俊文裁判長)は、必要経費該当性に争いのある支出については納税者側が支出の具体的な内容を明らかにし、その必要経費該当性について相応の立証をする必要があることから、その支出が必要経費に該当しないことが推認され、火災により証拠書類が消滅したと認めることもできないと指摘して、原審と同様、各更正処分は適法と判示して、納税者側の控訴を棄却する判決を言い渡した。 この事件は、納税者がした所得税の確定申告に対して、原処分庁が必要経費性等を否認して更正処分の上、過少申告加算税、重加算税の賦課決定処分をしてきたことから、納税者側がその取消しを求めて提訴したところ、原審の大阪地裁(平成26年(行ウ)第298号)が納税者側の請求をいずれも棄却したため、原判決の取消しを求めて納税者側が提訴したという事案である。 納税者側は控訴審で、必要経費該当性について争いがある支出について、納税者側がその支出の具体的内容を明らかにし、その必要経費性について相当の立証をする必要があり、納税者側がこれをしない場合にはその支出が必要経費に該当しないことが事実上推定されるとするのは不当であるという主張を補足的に展開した。 というのも、納税者側の支配領域外の出来事である火災によって証拠書類が失われて立証責任を転換するための前提を欠くことから、事実上の推定が働く余地はないということが背景にあったためのようだ。 これに対して控訴審は、原審と同様、更正処分はいずれも適法であると判断できるとした上で、必要経費該当性につき争いのある支出については、納税者側においてその支出の具体的内容を明らかにし、必要経費該当性について相応の立証をする必要があるというべきであと指摘。そのため、納税者がこれを行わない場合には、その支出が必要経費に該当しないことが推認されると判断した。 また、事実認定から、火災により証拠書類が消失したと認めることはできないとも指摘して、納税者側の補足的主張を斥けた。さらに、給与や貸倒金も架空のものと認定、重加算税の要件を満たすことは原審と同様に考えられると判示して、納税者側の請求を斥けている。      (2018.05.18大阪高裁判決、平成29年(行コ)第195号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2019.06.24 15:50:22