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原審が算定した役員退職給与の適正額を否定、法人側の請求を棄却

 法人が死亡退職した元代表取締役に支給した4億2000万円の退職慰労金に不相当に高額な部分があるか否かの判断が争われた事件で東京高裁(齊木敏文裁判長)は、法人側の主張を受け入れて原処分の一部取消しを認めた原審判決を取り消す旨の判決を言い渡した。

 この事件は、法人が死亡退職した元代表取締役に支給した退職慰労金の支給額4億2000万円を損金に算入してした法人税の申告に対して、原処分庁が支給額のうち2億875万円余を超える部分は不相当に高額であると認定して損金算入を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴したのが発端になったもの。

 これに対して原審(東京地裁平成27年(行ウ)第730号)は、功績倍率の3.26にその半数を加えた4.89に元代表取締役の最終月額報酬額及び勤続年数を乗じて求められる金額相当額(結果的に3億1687万円余)までの部分は退職給与として相当であると認められる金額を超えるものではないと判示して、更正処分のうち所得金額及び納付すべき税額並びに賦課決定処分のうち過少申告加算税の一定額を超える部分をいずれも取り消す旨の判決を言い渡したわけだ。

 そこで原処分庁側がその判決結果を不服として控訴する一方、法人側も原審で一部認められなかった部分を不服として附帯控訴したという事案である。

 控訴審は、法人側の請求には理由がないと判断した上で、公刊資料における類似法人の功績倍率には十分な実例情報が掲載されており、その事実は判断を左右するものではないと指摘。また、類似法人の中に算出された平均値より不相当に高い功績倍率を用いた法人があったとしても平均値を算定することの合理性は失われないとも指摘した。

 さらに、元代表取締役の在任中の功績についても、具体的貢献の態様及び程度が必ずしも明らかではなく、同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく功績倍率によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとは言いがたいほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められないという判断も示した。

 そうした判断から、元代表取締役の最終報酬月額に勤続年数及び平均功績倍率(3.26)を乗じた金額である2億1124万円余を算定、その算定額が退職給与として相当という判断を示した。結局、法人側の請求は理由がないから全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であると判示して、原判決中、原処分庁側が敗訴した部分を取り消す旨の判決を言い渡している。

(2018.04.25東京高裁判決、平成29年(行コ)第334号、同30年(行コ)第27号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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 法人が死亡退職した元代表取締役に支給した4億2000万円の退職慰労金に不相当に高額な部分があるか否かの判断が争われた事件で東京高裁(齊木敏文裁判長)は、法人側の主張を受け入れて原処分の一部取消しを認めた原審判決を取り消す旨の判決を言い渡した。 この事件は、法人が死亡退職した元代表取締役に支給した退職慰労金の支給額4億2000万円を損金に算入してした法人税の申告に対して、原処分庁が支給額のうち2億875万円余を超える部分は不相当に高額であると認定して損金算入を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴したのが発端になったもの。 これに対して原審(東京地裁平成27年(行ウ)第730号)は、功績倍率の3.26にその半数を加えた4.89に元代表取締役の最終月額報酬額及び勤続年数を乗じて求められる金額相当額(結果的に3億1687万円余)までの部分は退職給与として相当であると認められる金額を超えるものではないと判示して、更正処分のうち所得金額及び納付すべき税額並びに賦課決定処分のうち過少申告加算税の一定額を超える部分をいずれも取り消す旨の判決を言い渡したわけだ。 そこで原処分庁側がその判決結果を不服として控訴する一方、法人側も原審で一部認められなかった部分を不服として附帯控訴したという事案である。 控訴審は、法人側の請求には理由がないと判断した上で、公刊資料における類似法人の功績倍率には十分な実例情報が掲載されており、その事実は判断を左右するものではないと指摘。また、類似法人の中に算出された平均値より不相当に高い功績倍率を用いた法人があったとしても平均値を算定することの合理性は失われないとも指摘した。 さらに、元代表取締役の在任中の功績についても、具体的貢献の態様及び程度が必ずしも明らかではなく、同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく功績倍率によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとは言いがたいほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められないという判断も示した。 そうした判断から、元代表取締役の最終報酬月額に勤続年数及び平均功績倍率(3.26)を乗じた金額である2億1124万円余を算定、その算定額が退職給与として相当という判断を示した。結局、法人側の請求は理由がないから全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であると判示して、原判決中、原処分庁側が敗訴した部分を取り消す旨の判決を言い渡している。(2018.04.25東京高裁判決、平成29年(行コ)第334号、同30年(行コ)第27号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2019.06.10 15:22:23