固定資産の評価に関する法令解釈適用の誤りを指摘、原審に差戻し
固定資産税の登録価格の決定を巡って、土地の地目が宅地に該当するのか池沼に該当するのかの判断が争われてきた事件で最高裁(戸倉三郎裁判長)は、宅地と認定した上で決定された登録価格を適法とした原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があると判示して破棄、登録価格が評価基準によって決定される各土地の価格を上回らないか否か更に審理を尽くさせるため、名古屋高裁に差し戻した。
この事件は、2筆の土地に係る固定資産税の納税義務者が、自治体によって決定され、土地課税台帳に登録された各土地の価格を不服として固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたのがそもそもの発端となった。
しかし、その申出が棄却されたため、自治体を相手に提訴して取消しを求めてきたという事案であるが、地目が争われた土地は商業施設の用地として賃貸され、商業施設の開業以降は調整池の用に供され、また他方の土地は調整池としての機能を有する土地であるものの、平時は商業施設の従業員用の駐車場として使用されていた。
納税者の請求に対して控訴審の名古屋高裁は、各土地は宅地である商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められるから、各土地の地目を宅地と認定した上で決定された各登録価格は評価基準によって決定される価格を上回るものではなく適法であると判断、納税者の請求を斥けたため、納税者が更にその取消しを求めて上告したというわけだ。
上告審は、商業施設に係る開発行為に伴い各土地が調整池の用に供され、その調整機能を保持することが開発行為の許可条件になっていることを理由に、一方の土地の面積の80%以上に常時水がたまっていることなど各土地の現況等を十分に考慮することなく、各土地は宅地である商業施設の敷地を維持するために必要な土地であるとして、登録価格が評価基準によって決定される各土地の価格を上回るものではないとした原審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があると判示。
そのため、原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があると指摘した上で、各土地の現況、利用目的等に照らし、各登録価格が評価基準によって決定される各土地の価格を上回らないか否かについて更に審理を尽くさせるため原審に差し戻した。
(2019.04.09最高裁第三小法廷判決、平成30年(行ヒ)第262号)
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