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デジタル課税議論 各国の最低税率も焦点

 頭文字を取ってGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる巨大IT企業への課税ルールを見直す経済協力開発機構(OECD)が主導する議論の中で、課税権の配分ルールに加えて、国ごとに異なる法人税率の事実上の下限を定めるかも焦点の一つとなっている。ただ、大企業を呼び込みたい低税率国の反発は必至で、交渉は難航必至だ。
 OECDは、巨大IT企業が世界中の利用者からデータを大量に集めて稼いだ利益への課税権の配分方法を巡り、議論を重ねている。これに平行し、法人税率の国際的な最低ラインを定めることも議論する。税率の設定は原則、国家の主権にかかわるため、「ここまではっきりと踏み込むのは初めて」(国際金融筋)で、議論の行方に注目される。
 背景には、各国は税を免除したり極端に税率を低くしたりしている租税回避地(タックスヘイブン)に実体のない会社を設立して資産や利益を移して課税を逃れる動きに頭を悩まされてきたことがある。例えば、米グーグルは英国で稼いだ利益の大半を無税のバミューダ諸島や法人税率が低いアイルランドに移し、課税を逃れていたと指摘されて2016年に英政府と追加支払いに合意した。
 各国は08年のリーマン・ショックによる税収減で課税逃れへの関心を強めた。さらに16年、著名人や大企業の金融取引を記した「パナマ文書」の内容が報じられると、批判はさらに高まった。
 最低税率を定めればIT巨大企業を含めた多国籍企業が課税逃れをしにくくなるのは確かだが、無税や低税率国の反発をどう抑えるかが大きな課題だ。また、最低税率を定める方向は打ち出せても、税率についてや、研究開発税制など政策的な減税効果を法人税率の計算時に反映するかどうかなど、「各論」についての調整は困難を極めるだろう。
 日本は課税権分配と同様に、議長国を務める主要20各国・地域(G20)の財務大臣・中銀総裁会議で一定の方向性を打ち出したい考えだが、やはり簡単な道ではなさそうだ。

提供元:エヌピー通信社

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 頭文字を取ってGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる巨大IT企業への課税ルールを見直す経済協力開発機構(OECD)が主導する議論の中で、課税権の配分ルールに加えて、国ごとに異なる法人税率の事実上の下限を定めるかも焦点の一つとなっている。ただ、大企業を呼び込みたい低税率国の反発は必至で、交渉は難航必至だ。 OECDは、巨大IT企業が世界中の利用者からデータを大量に集めて稼いだ利益への課税権の配分方法を巡り、議論を重ねている。これに平行し、法人税率の国際的な最低ラインを定めることも議論する。税率の設定は原則、国家の主権にかかわるため、「ここまではっきりと踏み込むのは初めて」(国際金融筋)で、議論の行方に注目される。 背景には、各国は税を免除したり極端に税率を低くしたりしている租税回避地(タックスヘイブン)に実体のない会社を設立して資産や利益を移して課税を逃れる動きに頭を悩まされてきたことがある。例えば、米グーグルは英国で稼いだ利益の大半を無税のバミューダ諸島や法人税率が低いアイルランドに移し、課税を逃れていたと指摘されて2016年に英政府と追加支払いに合意した。 各国は08年のリーマン・ショックによる税収減で課税逃れへの関心を強めた。さらに16年、著名人や大企業の金融取引を記した「パナマ文書」の内容が報じられると、批判はさらに高まった。 最低税率を定めればIT巨大企業を含めた多国籍企業が課税逃れをしにくくなるのは確かだが、無税や低税率国の反発をどう抑えるかが大きな課題だ。また、最低税率を定める方向は打ち出せても、税率についてや、研究開発税制など政策的な減税効果を法人税率の計算時に反映するかどうかなど、「各論」についての調整は困難を極めるだろう。 日本は課税権分配と同様に、議長国を務める主要20各国・地域(G20)の財務大臣・中銀総裁会議で一定の方向性を打ち出したい考えだが、やはり簡単な道ではなさそうだ。提供元:エヌピー通信社
2019.03.29 09:11:20