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GAFA課税 3つの案を軸に検討 議長国として議論主導できるか

 巨大IT企業への課税ルールの見直しを巡る議論が進んでいる。経済協力開発機構(OECD)が2月に公表した3つの見直し案を基に、3月中旬にパリで公聴会を開く。今年の主要20カ国・地域(G20)議長国である日本は議論を主導し、この3案をたたき台に6月に福岡市で開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議で方向を打ち出して成果にしたい考えだが、各国の思惑が入り乱れて調整は難航必至だ。
 法人税は、支店や工場などの物理的な拠点がある国が課税できるというのが国際的な原則だ。しかしGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの巨大IT企業は拠点を置かない国でも利用者を増やし、集めたデータを活用して広告事業などで巨額の収益を上げる。多くの利用者がいるのに課税できない欧州などで不満が高まり、OECDが課税のルール作りを主導することになった。
 3案のうち、英国が提唱したのが、それぞれの国のインターネット上のサービス利用者数や利用量に応じて課税する案だ。利用者の検索回数などが多いほど、IT企業はデータを集めることができ、収益を上げやすい点に着目した。
 一方で米国は、企業が事業展開する国での顧客基盤やブランド力といった「マーケティング上の無形資産」に応じて課税するという対案を出した。米国はインターネット上のサービスを提供するGAFAを狙い撃ちにした英国案に警戒を強めており、米国案が採用されるとITに限らず多国籍企業への課税となる可能性がある。またインドなど新興国も、物理的な拠点がなくても、定期的な収入などの一定の条件の下に企業に課税できる第三の案を出した。
 日本はG20に向けて立場の異なる多国間の落としどころを探る難しい役割を担う。ただ、政府内ではこれまで議論にすら乗ってこなかった米国が対案を出してきたことに手応えを示す声もあるようだ。議論の展開次第では、法人税について100年来の見直しの機会にもなり得る。
 米国同様、巨大IT企業を抱える中国の出方も焦点で、今後の議論の推移は要注目だ。

提供元:エヌピー通信社

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 巨大IT企業への課税ルールの見直しを巡る議論が進んでいる。経済協力開発機構(OECD)が2月に公表した3つの見直し案を基に、3月中旬にパリで公聴会を開く。今年の主要20カ国・地域(G20)議長国である日本は議論を主導し、この3案をたたき台に6月に福岡市で開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議で方向を打ち出して成果にしたい考えだが、各国の思惑が入り乱れて調整は難航必至だ。 法人税は、支店や工場などの物理的な拠点がある国が課税できるというのが国際的な原則だ。しかしGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの巨大IT企業は拠点を置かない国でも利用者を増やし、集めたデータを活用して広告事業などで巨額の収益を上げる。多くの利用者がいるのに課税できない欧州などで不満が高まり、OECDが課税のルール作りを主導することになった。 3案のうち、英国が提唱したのが、それぞれの国のインターネット上のサービス利用者数や利用量に応じて課税する案だ。利用者の検索回数などが多いほど、IT企業はデータを集めることができ、収益を上げやすい点に着目した。 一方で米国は、企業が事業展開する国での顧客基盤やブランド力といった「マーケティング上の無形資産」に応じて課税するという対案を出した。米国はインターネット上のサービスを提供するGAFAを狙い撃ちにした英国案に警戒を強めており、米国案が採用されるとITに限らず多国籍企業への課税となる可能性がある。またインドなど新興国も、物理的な拠点がなくても、定期的な収入などの一定の条件の下に企業に課税できる第三の案を出した。  日本はG20に向けて立場の異なる多国間の落としどころを探る難しい役割を担う。ただ、政府内ではこれまで議論にすら乗ってこなかった米国が対案を出してきたことに手応えを示す声もあるようだ。議論の展開次第では、法人税について100年来の見直しの機会にもなり得る。 米国同様、巨大IT企業を抱える中国の出方も焦点で、今後の議論の推移は要注目だ。提供元:エヌピー通信社
2019.03.14 17:28:31