定年延長の退職一時金、所得区分に明暗
安定的な雇用確保のために就業規則等を見直して定年を延長する会社が後を絶たないが、従業員が「延長前の定年」に達したときに支払う退職一時金の税務上の取扱いについては、定年延長前からいる従業員と、定年延長後に入社してきた従業員とで異なる場合があるので注意が必要だ。これはこのほど事前照会に対する熊本国税局の回答で明らかとなったもの。
所得税基本通達30-2(5)では、引き続き勤務する者に退職手当等として一時に支払われる給与のうち、労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その旧定年に達した使用人に対し旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その支払いをすることについて相当の理由があると認められるもので、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは退職手当等とする旨が定められている。
照会者は、就業規則を改定して2019年4月1日より従業員の定年を60歳から64歳に延長することを決定。これに伴い従業員の入社時期にかかわらず一律で延長前の定年である満60歳に達したときに退職一時金を支給することとし、この退職一時金が同通達に定める給与に該当し、退職所得として取り扱ってよいかを照会した。
これに対し熊本国税局は、定年延長前からいる従業員については照会者の解釈で差し支えないとした一方で、定年延長後に入社する従業員についてはその限りではないと回答。同通達は労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合を前提としているが、定年延長後に入社する従業員は既に定年の延長が就業規則等で決定した後に雇用されることから「労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合」には該当しない。このため同通達は適用されず、退職所得として取り扱われるとは限らないという。
なお、この回答はあくまで熊本国税局の見解であり事前照会者の申告内容等を拘束するものではないとしているが、同種の税務取扱いに際しては頭に入れておきたい。
定年を延長した場合に従業員に対してその延長前の定年に達したときに支払う退職一時金の所得区分について
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