HOME ニュース一覧 法定納期限から5年経過後の期限後申告は不可と判断、棄却

税ニュース

法定納期限から5年経過後の期限後申告は不可と判断、棄却

 調査の時点で国税通則法が定める決定を受けていなければ、法定納期限から5年を経過した後でも期限後申告ができるか否かの判断が争われた事件で千葉地裁(阪本勝裁判長)は、法定納期限から5年が経過し、国税通則法が定める時効の中止及び停止に関する所定の事情が存在するとも認め難いことから、所得税の期限後申告をすることは認められないと判断、納税者側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、納税者が先物取引の差金決済に係る損益について、3年分とその翌年分に係る所得税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が3年分の前年分についても申告義務があるとして決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分、さらに3年分の翌年分の所得税等に係る無申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。

 そこで納税者側が、3年分の前年分に係る処分については、原処分庁が行政指導をするに当たり根拠等を示さなかった違法があると主張してその取消しを求める一方で、3年分の翌年分に係る処分については、期限後申告が調査による決定を予知してされたものではないなどと主張して、納付すべき税額に5%の割合を乗じた金額を超える部分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 納税者側は、調査の際、その前々年分の損失も翌年に繰り越したいと述べたところ、調査官から前々年分の所得税等は時効により期限後申告は認められない旨の説明を受けたが、調査の時点では国税通則法に基づく決定を受けていなかったのであるから、期限後申告を行うことができたと主張した。

 しかし判決は、確定申告は納税者自らの判断と責任においてその納税額を自ら確定させる行為であると解釈。そのため、決定がされない場合であっても、その申告の対象となる国税の時効期間は経過し、抽象的な納税義務自体が消滅し、具体的な納税義務の内容を確定することができなくなった時には、期限後申告をすることはできなくなると解するほかはなく、納税者側が期限後申告をすることができる期間は原則として、その国税に係る法定納期限から5年間であると解するのが相当と指摘した。

 そうすると、調査時点においては、前々年分の所得税の法定納期限から5年を経過し、納税者側の所得税に関して時効の中断及び停止を定めた国税通則法73条3項が掲げる所定の事情が存するとも認め難く、期限後申告をすることができなかったことになると判断して、納税者側の主張を斥けた。因みに、この他にも行政指導の不備、理由提示の不備等々の可否も争われたが、これらの納税者側の主張も悉く斥けられている。

              (2018.01.16千葉地裁判決、課税処分等取消請求事件)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

昨年末の固定資産税ゼロ自治体は1594

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2019/img/img_kokuzeitsusoku_01_s.jpg
 調査の時点で国税通則法が定める決定を受けていなければ、法定納期限から5年を経過した後でも期限後申告ができるか否かの判断が争われた事件で千葉地裁(阪本勝裁判長)は、法定納期限から5年が経過し、国税通則法が定める時効の中止及び停止に関する所定の事情が存在するとも認め難いことから、所得税の期限後申告をすることは認められないと判断、納税者側の主張を斥ける判決を言い渡した。 この事件は、納税者が先物取引の差金決済に係る損益について、3年分とその翌年分に係る所得税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が3年分の前年分についても申告義務があるとして決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分、さらに3年分の翌年分の所得税等に係る無申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。 そこで納税者側が、3年分の前年分に係る処分については、原処分庁が行政指導をするに当たり根拠等を示さなかった違法があると主張してその取消しを求める一方で、3年分の翌年分に係る処分については、期限後申告が調査による決定を予知してされたものではないなどと主張して、納付すべき税額に5%の割合を乗じた金額を超える部分の取消しを求めて提訴したという事案である。 納税者側は、調査の際、その前々年分の損失も翌年に繰り越したいと述べたところ、調査官から前々年分の所得税等は時効により期限後申告は認められない旨の説明を受けたが、調査の時点では国税通則法に基づく決定を受けていなかったのであるから、期限後申告を行うことができたと主張した。 しかし判決は、確定申告は納税者自らの判断と責任においてその納税額を自ら確定させる行為であると解釈。そのため、決定がされない場合であっても、その申告の対象となる国税の時効期間は経過し、抽象的な納税義務自体が消滅し、具体的な納税義務の内容を確定することができなくなった時には、期限後申告をすることはできなくなると解するほかはなく、納税者側が期限後申告をすることができる期間は原則として、その国税に係る法定納期限から5年間であると解するのが相当と指摘した。 そうすると、調査時点においては、前々年分の所得税の法定納期限から5年を経過し、納税者側の所得税に関して時効の中断及び停止を定めた国税通則法73条3項が掲げる所定の事情が存するとも認め難く、期限後申告をすることができなかったことになると判断して、納税者側の主張を斥けた。因みに、この他にも行政指導の不備、理由提示の不備等々の可否も争われたが、これらの納税者側の主張も悉く斥けられている。              (2018.01.16千葉地裁判決、課税処分等取消請求事件)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2019.02.05 16:08:50