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日税連の税制審議会 相続税「まだ増税の余地あり」 会長諮問に答申

 日税連の税制審議会(会長・金子宏東京大学名誉教授)は12月21日、相続税制のあり方についての審議内容を取りまとめ、神津信一会長に答申した。相続税の機能は富の再分配と次世代での機会の平等の実現であることを踏まえ、とりわけ高額な相続財産に対しては現行の55%を上回る税率を課す余地があるとした。審議会の答申は日税連が毎年作成する税制改正建議書に反映される。
 2018年6月に神津会長から出された諮問は、「相続税の機能と今後の税制のあり方について」というもの。諸外国では相続税の廃止や大幅な軽課をしている例もあるなかで、日本の相続税の機能とその検証や、社会保障のあり方が変わっていくなかでの税制のあり方について審議するよう求めていた。
 報告書ではまず、相続税の基本的かつ重要な機能は、資産の再分配による格差の固定化防止と、それによる次世代の機会の平等であると前提を置いた。その上で、所得課税と異なり勤労意欲に直接的な影響もないことから、とりわけ高額な財産については「より多くの負担を求めることが適当」、「最高税率の引き上げを検討する余地がある」とした。
 また急増する高齢者の社会保障費を相続税の課税強化でまかなうべきとの論点に対しては、「高齢者間には依然として資産格差や所得格差が大きい」として、高齢者に広く相続税の負担を求めることは適切ではないと主張し、社会保障財源は他の税を含め幅広く手当てするべきであり、基礎控除額のさらなる引き下げは適当ではないと結論付けた。
 個別の制度については、孫への相続で税額が2割加算される現行ルールについて、「若年層への早期の資産移転の必要性が高まっていることを勘案すると、2割加算を適用しないという方策を検討する余地がある」とした。
 また19年度税制改正大綱に盛り込まれた「配偶者居住権」に関し、居住権は建物に対する権利であるため、従来の小規模宅地等の特例を適用することは「不可能である」と断じている。一方、宅地の利用権に関しては小規模宅地等の特例を適用できるとした。

提供元:エヌピー通信社

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 日税連の税制審議会(会長・金子宏東京大学名誉教授)は12月21日、相続税制のあり方についての審議内容を取りまとめ、神津信一会長に答申した。相続税の機能は富の再分配と次世代での機会の平等の実現であることを踏まえ、とりわけ高額な相続財産に対しては現行の55%を上回る税率を課す余地があるとした。審議会の答申は日税連が毎年作成する税制改正建議書に反映される。 2018年6月に神津会長から出された諮問は、「相続税の機能と今後の税制のあり方について」というもの。諸外国では相続税の廃止や大幅な軽課をしている例もあるなかで、日本の相続税の機能とその検証や、社会保障のあり方が変わっていくなかでの税制のあり方について審議するよう求めていた。 報告書ではまず、相続税の基本的かつ重要な機能は、資産の再分配による格差の固定化防止と、それによる次世代の機会の平等であると前提を置いた。その上で、所得課税と異なり勤労意欲に直接的な影響もないことから、とりわけ高額な財産については「より多くの負担を求めることが適当」、「最高税率の引き上げを検討する余地がある」とした。 また急増する高齢者の社会保障費を相続税の課税強化でまかなうべきとの論点に対しては、「高齢者間には依然として資産格差や所得格差が大きい」として、高齢者に広く相続税の負担を求めることは適切ではないと主張し、社会保障財源は他の税を含め幅広く手当てするべきであり、基礎控除額のさらなる引き下げは適当ではないと結論付けた。 個別の制度については、孫への相続で税額が2割加算される現行ルールについて、「若年層への早期の資産移転の必要性が高まっていることを勘案すると、2割加算を適用しないという方策を検討する余地がある」とした。 また19年度税制改正大綱に盛り込まれた「配偶者居住権」に関し、居住権は建物に対する権利であるため、従来の小規模宅地等の特例を適用することは「不可能である」と断じている。一方、宅地の利用権に関しては小規模宅地等の特例を適用できるとした。提供元:エヌピー通信社
2018.12.27 16:20:09