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国税庁 海外口座55万件の情報入手 新制度で富裕層の資産把握

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 国税庁は10月31日、各国の税務当局と情報を交換する「CRS(共通報告基準)」制度によって、日本人が保有する55万件超の海外口座の情報を入手したと発表した。日本は9月からCRSに参加し、初回の情報交換を終えたばかりだ。海外口座の情報は今後も定期的に自動交換される仕組みで、富裕層が国外に持つ資産の捕捉がますます進んでいくことになる。
 「CRS(コモン・レポーティング・スタンダード):共通報告基準」とはOECD(経済協力開発機構)が策定したルールで、基準を適用する国同士が、それぞれの国の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を、年に一回、自動的に交換するという仕組みのことだ。
 国税庁によればCRSを使った初回の情報交換で、64の国・地域から日本人が現地に持つ銀行口座の情報を得たという。逆に日本からは58の国・地域に、日本国内にある口座の情報を提供した。国税庁が情報を受け取った口座数は55万705に上る。
 地域別で見ると、アジア・大洋州(太平洋上の国家など)が29万超と最も多く、欧米・NIS諸国(旧ソ圏)が20万超と続いた。これらの地域には資金の秘匿先として名高いシンガポールやスイス、アイルランドなどが含まれる。代表的なタックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領バージン諸島やケイマン諸島を含む北米・中南米からも4万超の口座情報が寄せられた。
 現在、日本と自動的な情報交換を行う体制が構築されているのは88の国・地域だが、今後さらに増加し、ナイジェリアやカメルーンなどのアフリカ諸国、フィリピンやタイなどのアジア諸国の参加も見込まれているという。国税庁は初回の情報交換を終えて、「受領した金融口座情報は、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他すでに保有している様々な情報と併せて分析」し、海外への資産隠しや国際的租税回避行為に「適切に対応していく」とコメントした。

非参加国への資産フライト急増

 二国間の情報交換制度としては、今までも必要に応じて税務当局が相手国に情報を請求して取り寄せるというやり取りは行われてきた。しかし情報の交換には時間も手間もかかり、結果として国外資産に対する税務調査が満足に行えないという状況があった。CRSの実施によって、富裕層の海外資産の捕捉は飛躍的に進むことが予想される。
 もっとも、CRSには交換開始時期が未定の国も含めて149の国・地域が参加しているとはいえ、すでに独自の資産フライト対策を敷いている米国をはじめとして参加の意思を示していない国もまだ多い。実際に、タックスヘイブンに関わる情報を収集分析するタックス・ジャスティス・ネットワークによれば、米国がCRS非加盟を表明した16年以降、非居住者を対象とした米国内の金融サービスの利用者が急増し、シェアは英国やルクセンブルクをしのぐ世界一の22.3%に伸びたそうだ。国際的な租税回避行為を追う各国の税務当局との〝鬼ごっこ〟は、まだ終わりそうにない。

提供元:エヌピー通信社

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 国税庁は10月31日、各国の税務当局と情報を交換する「CRS(共通報告基準)」制度によって、日本人が保有する55万件超の海外口座の情報を入手したと発表した。日本は9月からCRSに参加し、初回の情報交換を終えたばかりだ。海外口座の情報は今後も定期的に自動交換される仕組みで、富裕層が国外に持つ資産の捕捉がますます進んでいくことになる。 「CRS(コモン・レポーティング・スタンダード):共通報告基準」とはOECD(経済協力開発機構)が策定したルールで、基準を適用する国同士が、それぞれの国の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を、年に一回、自動的に交換するという仕組みのことだ。 国税庁によればCRSを使った初回の情報交換で、64の国・地域から日本人が現地に持つ銀行口座の情報を得たという。逆に日本からは58の国・地域に、日本国内にある口座の情報を提供した。国税庁が情報を受け取った口座数は55万705に上る。 地域別で見ると、アジア・大洋州(太平洋上の国家など)が29万超と最も多く、欧米・NIS諸国(旧ソ圏)が20万超と続いた。これらの地域には資金の秘匿先として名高いシンガポールやスイス、アイルランドなどが含まれる。代表的なタックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領バージン諸島やケイマン諸島を含む北米・中南米からも4万超の口座情報が寄せられた。 現在、日本と自動的な情報交換を行う体制が構築されているのは88の国・地域だが、今後さらに増加し、ナイジェリアやカメルーンなどのアフリカ諸国、フィリピンやタイなどのアジア諸国の参加も見込まれているという。国税庁は初回の情報交換を終えて、「受領した金融口座情報は、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他すでに保有している様々な情報と併せて分析」し、海外への資産隠しや国際的租税回避行為に「適切に対応していく」とコメントした。
2018.11.02 09:21:42