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最高裁、相続財産の無償譲渡は贈与と判断、原審に差戻し

 相続分の無償譲渡による相続財産の持分の移転が相続財産の贈与に該当するか否かの判断が争われた遺留分減殺請求事件で最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、共同相続人間における相続財産の無償譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡した者の相続においては民法903条1項が定める贈与に該当すると判断して原審の判断を否定、更に審理を尽くさせるため原審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、相続分の無償譲渡を受けた相続人に対して他の相続人が相続分の譲渡による遺留分の侵害を主張、遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求めて上告審まで争われてきた事案だ。

 原審の東京高裁は、相続分の譲渡による相続財産の持分の移転は遺産分割が終了するまでの暫定的なもので、最終的に遺産分割が確定すれば遡及効により、相続分の譲受人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになるから、相続財産の贈与があったとは観念できないと判断。

 また、相続分の譲渡は必ずしも譲受人に経済的利益をもたらすものとはいえず、経済的利益があるか否かは相続分の積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定しなければ判明しないとも指摘した。つまり、相続分の譲渡は遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与には当たらないという判断をしたわけだ。

 しかし最高裁は、原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があると指摘して、更に審理を尽くさせるため原審に差し戻した。

 というのも、共同相続人間で相続分が譲渡されたときは、積極財産と消極財産を包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、それに伴い個々の相続財産に係る共有持分の移転も生ずると解釈され、相続分の譲渡を受けた共同相続人は、従前から有していた相続分と譲渡に係る相続分を合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり、その遺産分割手続等において、他の共同相続人に対し、従前から有していた相続分と譲渡に係る相続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることができることになるからだ。

 したがって、共同相続人間における相続分の無償譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡した者の相続において贈与(民法903①)に当たると判示して、原審への差戻しを命じる判決を言い渡した。

          (2018.10.19最高裁第三小法廷判決、平成29年(受)第1735号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続分の無償譲渡による相続財産の持分の移転が相続財産の贈与に該当するか否かの判断が争われた遺留分減殺請求事件で最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、共同相続人間における相続財産の無償譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡した者の相続においては民法903条1項が定める贈与に該当すると判断して原審の判断を否定、更に審理を尽くさせるため原審に差戻しを命じる判決を言い渡した。 この事件は、相続分の無償譲渡を受けた相続人に対して他の相続人が相続分の譲渡による遺留分の侵害を主張、遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求めて上告審まで争われてきた事案だ。 原審の東京高裁は、相続分の譲渡による相続財産の持分の移転は遺産分割が終了するまでの暫定的なもので、最終的に遺産分割が確定すれば遡及効により、相続分の譲受人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになるから、相続財産の贈与があったとは観念できないと判断。 また、相続分の譲渡は必ずしも譲受人に経済的利益をもたらすものとはいえず、経済的利益があるか否かは相続分の積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定しなければ判明しないとも指摘した。つまり、相続分の譲渡は遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与には当たらないという判断をしたわけだ。 しかし最高裁は、原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があると指摘して、更に審理を尽くさせるため原審に差し戻した。 というのも、共同相続人間で相続分が譲渡されたときは、積極財産と消極財産を包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、それに伴い個々の相続財産に係る共有持分の移転も生ずると解釈され、相続分の譲渡を受けた共同相続人は、従前から有していた相続分と譲渡に係る相続分を合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり、その遺産分割手続等において、他の共同相続人に対し、従前から有していた相続分と譲渡に係る相続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることができることになるからだ。 したがって、共同相続人間における相続分の無償譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定したその相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡した者の相続において贈与(民法903①)に当たると判示して、原審への差戻しを命じる判決を言い渡した。          (2018.10.19最高裁第三小法廷判決、平成29年(受)第1735号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.10.29 16:30:25