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原処分を適法との判断は結論的には是認できると判示

 権利なき社団法人が、同社団に対する理事長の借入金債務を免除したことが給与等に該当するか否かの判断が争われ、1、2審とも国側敗訴後、最高裁が原審に再戻しを命じた事件で、最高裁(山崎敏充裁判長)は原審の判断には法令の解釈適用に誤りはあるものの、原処分を適法とした判断は結論的に是認できると判示、社団法人側の上告を棄却した。

 この事件は、青果物等の買付けを主たる事業とする権利能力のない社団が理事長の借入金債務を免除したことを原処分庁が賞与と認定、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、社団側がその取消しを求めて提訴したのがそもそもの発端となった。

 1、2審とも社団側が勝訴したため国側が上告したところ、最高裁が差戻しを命じる判決を言い渡した。その結果、原審は債務免除益は賞与等の性質を有する給与に該当するとして債務免除に伴う経済的利益を認定、原処分を適法と判断した。また、社団側が、社団と理事長が確認した前提条件に錯誤があり、要素の錯誤を理由に債務免除は無効と主張したことに対しては、法定納期限の経過後に源泉所得税の納付義務の発生原因たる法律行為に錯誤無効の主張をすることは許されないと解釈して、社団側の主張を斥けた。

 この原審の解釈に対して最高裁は、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について法定納期限が経過したという一事をもって、行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないという解釈を示した上で、原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ないと指摘して、その解釈を否定した。

 しかし、社団側も、納税告知処分が行われた時点までに、債務免除により生じた経済的成果が無効であることに基因して失われた旨の主張をしていないのであるから、社団側の主張をもって原処分を違法ということはできないと指摘。

 つまり、原処分を適法とした原審の判断は結論において是認することができるものの、その論旨は採用することができないと判示して、社団側の上告を棄却したわけだ。そのため、錯誤無効の成否を判断する際には、事案に応じ、錯誤の対象、表意者の認識、重過失の有無等を認定された具体的事実に基づいて慎重に検討すべきであるという補足意見も付け加えられている。

           (2018.09.25最高裁第三小法廷判決、平成29年(行ヒ)第209号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 権利なき社団法人が、同社団に対する理事長の借入金債務を免除したことが給与等に該当するか否かの判断が争われ、1、2審とも国側敗訴後、最高裁が原審に再戻しを命じた事件で、最高裁(山崎敏充裁判長)は原審の判断には法令の解釈適用に誤りはあるものの、原処分を適法とした判断は結論的に是認できると判示、社団法人側の上告を棄却した。 この事件は、青果物等の買付けを主たる事業とする権利能力のない社団が理事長の借入金債務を免除したことを原処分庁が賞与と認定、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、社団側がその取消しを求めて提訴したのがそもそもの発端となった。 1、2審とも社団側が勝訴したため国側が上告したところ、最高裁が差戻しを命じる判決を言い渡した。その結果、原審は債務免除益は賞与等の性質を有する給与に該当するとして債務免除に伴う経済的利益を認定、原処分を適法と判断した。また、社団側が、社団と理事長が確認した前提条件に錯誤があり、要素の錯誤を理由に債務免除は無効と主張したことに対しては、法定納期限の経過後に源泉所得税の納付義務の発生原因たる法律行為に錯誤無効の主張をすることは許されないと解釈して、社団側の主張を斥けた。 この原審の解釈に対して最高裁は、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について法定納期限が経過したという一事をもって、行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないという解釈を示した上で、原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ないと指摘して、その解釈を否定した。 しかし、社団側も、納税告知処分が行われた時点までに、債務免除により生じた経済的成果が無効であることに基因して失われた旨の主張をしていないのであるから、社団側の主張をもって原処分を違法ということはできないと指摘。 つまり、原処分を適法とした原審の判断は結論において是認することができるものの、その論旨は採用することができないと判示して、社団側の上告を棄却したわけだ。そのため、錯誤無効の成否を判断する際には、事案に応じ、錯誤の対象、表意者の認識、重過失の有無等を認定された具体的事実に基づいて慎重に検討すべきであるという補足意見も付け加えられている。           (2018.09.25最高裁第三小法廷判決、平成29年(行ヒ)第209号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.10.01 16:37:28