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馬券払戻金を除外した虚偽申告に有罪判決

 勝馬投票券(馬券)の払戻金による一時所得を除外して過少申告した事件で大阪地裁(村越一浩裁判長)は、懲役刑及び罰金刑を選択併科することはやむを得ないと判示した上で、納税者に懲役6月及び罰金1200万円を科する判決を言い渡した。

 この事件は、馬券購入を繰り返して収入を得ていた地方公務員が競馬の勝馬投票券の払戻金による一時所得を除外し、3年間で所得税額を6200万円逋脱していたことから告発されたものだが、発端は、納税者名義の普通預金口座に日本中央競馬会からの2億3000万円余の振込入金を、別件の犯則事件で金融機関調査を行っていた査察官が発見したことによるもの。

 そこで弁護側は、査察官の査察調査の際にいわゆる横目調査あるいは悉皆調査といった、プライバシー等を侵害する重大な違法調査がなされた可能性を否定できない旨主張した。つまり、公訴権濫用、可罰的違法性の不存在等を主張したわけだ。

 判決は、別件の犯則事件の調査については、対象範囲の絞込みが不十分であった疑いを否定できず、査察官が納税者名義の普通預金口座の情報を持ち帰った点については、別件の犯則事件の調査というよりは、むしろ納税者に対する所得税法違反の調査を主眼としていた疑いも否定できず、一連の調査に違法性の疑いが残ると示唆した。

 しかし、金融機関への調査は、別件犯則事件の調査の一環として銀行側の協力の下で行われた任意調査であることなどに照らせば、調査時の違法の程度は重大とまではいえないことから、査察官調査書が違法収集証拠として排除されるべきであるという弁護人の主張には理由がないと斥けた。

 結局、ほ脱税額が多額、ほ脱率も全体で約97.8%と高率、さらに、馬券の高額配当の払戻しを受けてから具体的な税額を計算するなどし、所得税の納税義務があることを確定的に認識しながら、2ヵ年分にわたって、虚偽の過少申告を行っていたと認定。また、市役所で課税担当部門に所属するなど、納税者の模範となるべき行動が求められる立場にいたにもかかわらず、多額の税金を免れたものであり、厳しい非難は免れないと指摘した。

 他方、過少申告の際に、特段の所得秘匿工作はしておらず、確定申告は別に不動産所得があったからであることなどに照らせば、ほ脱犯の中では、比較的犯情が軽い部類に属すると評価すべきである判示、結果的に、罰金刑と執行猶予付きの選択併科する旨が言い渡された。

               (2018.05.09大阪地裁判決、平成28年(わ)第4190号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 勝馬投票券(馬券)の払戻金による一時所得を除外して過少申告した事件で大阪地裁(村越一浩裁判長)は、懲役刑及び罰金刑を選択併科することはやむを得ないと判示した上で、納税者に懲役6月及び罰金1200万円を科する判決を言い渡した。 この事件は、馬券購入を繰り返して収入を得ていた地方公務員が競馬の勝馬投票券の払戻金による一時所得を除外し、3年間で所得税額を6200万円逋脱していたことから告発されたものだが、発端は、納税者名義の普通預金口座に日本中央競馬会からの2億3000万円余の振込入金を、別件の犯則事件で金融機関調査を行っていた査察官が発見したことによるもの。 そこで弁護側は、査察官の査察調査の際にいわゆる横目調査あるいは悉皆調査といった、プライバシー等を侵害する重大な違法調査がなされた可能性を否定できない旨主張した。つまり、公訴権濫用、可罰的違法性の不存在等を主張したわけだ。 判決は、別件の犯則事件の調査については、対象範囲の絞込みが不十分であった疑いを否定できず、査察官が納税者名義の普通預金口座の情報を持ち帰った点については、別件の犯則事件の調査というよりは、むしろ納税者に対する所得税法違反の調査を主眼としていた疑いも否定できず、一連の調査に違法性の疑いが残ると示唆した。 しかし、金融機関への調査は、別件犯則事件の調査の一環として銀行側の協力の下で行われた任意調査であることなどに照らせば、調査時の違法の程度は重大とまではいえないことから、査察官調査書が違法収集証拠として排除されるべきであるという弁護人の主張には理由がないと斥けた。 結局、ほ脱税額が多額、ほ脱率も全体で約97.8%と高率、さらに、馬券の高額配当の払戻しを受けてから具体的な税額を計算するなどし、所得税の納税義務があることを確定的に認識しながら、2ヵ年分にわたって、虚偽の過少申告を行っていたと認定。また、市役所で課税担当部門に所属するなど、納税者の模範となるべき行動が求められる立場にいたにもかかわらず、多額の税金を免れたものであり、厳しい非難は免れないと指摘した。 他方、過少申告の際に、特段の所得秘匿工作はしておらず、確定申告は別に不動産所得があったからであることなどに照らせば、ほ脱犯の中では、比較的犯情が軽い部類に属すると評価すべきである判示、結果的に、罰金刑と執行猶予付きの選択併科する旨が言い渡された。               (2018.05.09大阪地裁判決、平成28年(わ)第4190号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.07.30 16:03:06