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ハズレ馬券の通達改正 ソフト未使用でも雑所得に パブコメ反映は1件のみ

 国税庁は7月5日、競馬のハズレ馬券の取り扱いに関する改正通達を公表した。昨年12月に最高裁が下した馬券の所得区分に関する判決を受けたもので、原則的に「一時所得」に当たる馬券の払戻金が、どれだけ恒常的、網羅的な購入であれば「雑所得」に当たるのかの〝境界線〟を提示したもの。これまでは雑所得に当たる馬券購入は予想ソフトを使用したケースに限定していたが、ソフトに頼らなくても網羅的に馬券を購入して継続して利益を上げれば雑所得と認める内容になっている。公表に先立って国税庁は改正案に対するパブリックコメントを受け付けていたが、寄せられた23件のコメントのうち、意見が通達に反映されたものは1件にとどまった。
 改正された通達は、馬券の払戻金が「一時所得」に当たるか「雑所得」に当たるかの新たな判断基準を示した。それによれば、自動購入ソフトを利用するか、「予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組み合わせにより定めた購入パターン」に従って、「年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入」し、「回収率が(中略)100%を超えるように馬券を購入し続けてきた」に限って、馬券の払戻金を「雑所得」と認めるとしている。
 どちらの所得に含まれるかで、それぞれ経費として認められる範囲が大きく変わり、一時所得であれば、収入に直接要した金額のみが経費と認められるため、収入に直接結び付いていないハズレ馬券の購入費用は経費に当たらない。一方、雑所得では経費の範囲が大きく広がり、「その他業務上の費用の額」にハズレ馬券の購入費用が含まれる。例えば2015年に最高裁でハズレ馬券の経費性を争った男性は、約30億円の払戻金を得るために約29億円分の馬券を購入していた。そのうち当たり馬券の購入費用は1億3000万円だったというから、雑所得であれば課税所得は1億円だが、一時所得だと28億7000万円に所得税が課されてしまうことになる。
 最高裁は15年、17年と2度にわたってハズレ馬券が経費に当たるとの判断を示したが、雑所得として認められる払戻金の範囲がなし崩しに広がれば、全国の競馬ファンから同様の訴えを起こされる可能性もあることから、国税庁が示した改正通達案は非常に限定的な説明となっていた。
 この改正案に寄せられたコメントは23件。国税庁のホームページでは意見の一覧が公開されていて、そのほとんどは、改正案には国税庁の一方的な見解のもと雑所得と認められる馬券購入行為の範囲を限定しているため、訂正ないし削除を求めるものだった。しかし国税庁はそれらの意見に対しては「納税者の方の予測可能性を高める観点から具体例を明記する必要がある」「雑所得として認められるのは営利を目的とする継続的行為に該当する例外的な場合」であるとして、訂正を否定している。唯一意見が反映されたのは、最高裁判決が示した基準は競馬に限らずギャンブル全般に適用されるものなので馬券と限定するのはおかしいという指摘で、国税庁はそれを踏まえて「競輪の車券の払戻金等に係る所得についても、競馬の馬券の払戻金に準じて取り扱うことに留意する」との注釈を追加した。

提供元:エヌピー通信社

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 国税庁は7月5日、競馬のハズレ馬券の取り扱いに関する改正通達を公表した。昨年12月に最高裁が下した馬券の所得区分に関する判決を受けたもので、原則的に「一時所得」に当たる馬券の払戻金が、どれだけ恒常的、網羅的な購入であれば「雑所得」に当たるのかの〝境界線〟を提示したもの。これまでは雑所得に当たる馬券購入は予想ソフトを使用したケースに限定していたが、ソフトに頼らなくても網羅的に馬券を購入して継続して利益を上げれば雑所得と認める内容になっている。公表に先立って国税庁は改正案に対するパブリックコメントを受け付けていたが、寄せられた23件のコメントのうち、意見が通達に反映されたものは1件にとどまった。 改正された通達は、馬券の払戻金が「一時所得」に当たるか「雑所得」に当たるかの新たな判断基準を示した。それによれば、自動購入ソフトを利用するか、「予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組み合わせにより定めた購入パターン」に従って、「年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入」し、「回収率が(中略)100%を超えるように馬券を購入し続けてきた」に限って、馬券の払戻金を「雑所得」と認めるとしている。 どちらの所得に含まれるかで、それぞれ経費として認められる範囲が大きく変わり、一時所得であれば、収入に直接要した金額のみが経費と認められるため、収入に直接結び付いていないハズレ馬券の購入費用は経費に当たらない。一方、雑所得では経費の範囲が大きく広がり、「その他業務上の費用の額」にハズレ馬券の購入費用が含まれる。例えば2015年に最高裁でハズレ馬券の経費性を争った男性は、約30億円の払戻金を得るために約29億円分の馬券を購入していた。そのうち当たり馬券の購入費用は1億3000万円だったというから、雑所得であれば課税所得は1億円だが、一時所得だと28億7000万円に所得税が課されてしまうことになる。 最高裁は15年、17年と2度にわたってハズレ馬券が経費に当たるとの判断を示したが、雑所得として認められる払戻金の範囲がなし崩しに広がれば、全国の競馬ファンから同様の訴えを起こされる可能性もあることから、国税庁が示した改正通達案は非常に限定的な説明となっていた。 この改正案に寄せられたコメントは23件。国税庁のホームページでは意見の一覧が公開されていて、そのほとんどは、改正案には国税庁の一方的な見解のもと雑所得と認められる馬券購入行為の範囲を限定しているため、訂正ないし削除を求めるものだった。しかし国税庁はそれらの意見に対しては「納税者の方の予測可能性を高める観点から具体例を明記する必要がある」「雑所得として認められるのは営利を目的とする継続的行為に該当する例外的な場合」であるとして、訂正を否定している。唯一意見が反映されたのは、最高裁判決が示した基準は競馬に限らずギャンブル全般に適用されるものなので馬券と限定するのはおかしいという指摘で、国税庁はそれを踏まえて「競輪の車券の払戻金等に係る所得についても、競馬の馬券の払戻金に準じて取り扱うことに留意する」との注釈を追加した。提供元:エヌピー通信社
2018.07.13 09:08:14