所有者不明土地 前途多難の「ランドバンク」構想 税逃れへの悪用懸念
持ち主が分からない「所有者不明土地」問題が深刻化している。全国ベースでは、既に九州全体の面積を超えている。政府はそうした土地の所有権を放棄させるシステムを設けて管理したい考えで、「ランドバンク」なる公的機関を設置する案が出ている。しかし、税負担を回避するために制度を悪用するケースが想定されており、実現までのハードルは高い。
民間の有識者らによる「所有者不明土地問題研究会」が6月25日に開いた会合では、座長の増田寛也元総務相が「昨年で成果を上げて(研究会を)閉じようと思ったが、検討すべき項目があった」と、制度の実現に鼻息を荒くした。所有者が分からない土地は2016年の時点で約410万ヘクタールと推計されており、このままだと40年には北海道全体の規模まで迫る見込みだ。経済損失を試算すると累計で6兆円にも上るという。政府は年明けにまとまる研究会の提言を対策案に盛り込み、20年までの法整備を目指す。
土地の所有権放棄について、現行法の規定は曖昧だ。政府には、長期間放置された土地は所有権を放棄したとみなしたり、所有者が管理できない土地の所有権を放棄したりする仕組みが念頭にある。ただし、実現までの道のりは厳しい。例えばみなし放棄ひとつとっても、そもそも憲法で守られている財産権との折り合いが難しく、放棄されたと判断できる実際の放置期間をどの程度に設定するかも意見が割れるところだ。
さらに、投機目的で購入した所有者が値下がりした土地を放棄する事態も考えられる。この場合、そのまま放棄を認めてしまえば、税金の支払いを逃れることを許してしまうことにつながる恐れがある。国土交通省幹部は「山積した課題をクリアできなければ、ランドバンクが公的機関、つまり税金を投入する対象として国民の理解を得られないだろう」と指摘している。
提供元:エヌピー通信社