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実質的に退職したと同様の事情が認められないと認定、棄却

 代表取締役が代表権のない取締役に分掌変更したことに伴って法人がその役員に支給した金員が、法人税法上の役員退職給与として損金に算入することが認められるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、分掌変更後も法人の経営ないし業務において主要な地位を占めているとともに、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないという判断から、法人税法上、損金に算入することができる役員退職給与には該当しないと指摘して、審査請求を棄却した。

 この事件は、法人が役員の分掌変更に伴ってその役員に対して退職慰労金、いわゆる分掌変更退職金を支給したのがそもそもの発端。これに対して原処分庁が、その役員が分掌変更によって実質的に退職したと同様の事情にあるとは認められないという判断から、役員に支給した金員は退職給与ではなく損金の額に算入されない役員給与であると認定した上で、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をするとともに、給与所得に該当するという判断から源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。

 そこで法人側が、損金に算入が認められる法人税法上の退職給与ないし退職所得に該当すると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 法人側は、代表取締役社長を辞任し、代表権のない取締役会会長となったことに伴ってその役員に支給した金員は、分掌変更によって役員の各業務に関する権限を他の役員等に委譲し、仕事量、質及び内容が大幅に縮小又は変更したことによるものであると反論。その上で、法人の役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあったといえるから、法人税法上の退職給与に該当する旨主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 裁決は、分掌変更に伴って、役員の地位や職務について相当程度の変動が生じたことは認めたものの、分掌変更後も、法人の経営ないし業務において主要な地位を占め、取締役としての重要な決定事項に関与していたと認定。その結果、役員が分掌変更によって、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないと指摘して、法人税法上の損金算入が認められる退職給与には該当しないと判断して、審査請求を棄却した。

                     (2017.07.14国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)



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2018.06.25 16:22:47