査察白書、脱税総額は135億円、告発割合は69.3%
国税庁が6月14日に公表した平成29年度の査察の概要(いわゆる査察白書)によると、今年4月までの1年間に行った査察の着手件数は前年度に比べて4件少ない174件で、平成に入ってから最も少ない件数となっている。一方、検察庁への告発の可否を最終的に判断した処理件数は、前年度以前に着手した継続事案を含めて163件で、このうち69.3%にあたる113件について、事案が高額・悪質などの理由から検察庁に告発した。
処理した113件の脱税総額(加算税含む)は135億900万円で、このうち告発分は100億100万円で、1件当たりでみると全体では8300万円、告発分のみでは8900万円。告発件数の多かった業種では、「建設業」26者、「不動産業」10者、「人材派遣」5者の順となっていて、建設業と不動産業は“不動のツートップ”だ。
国税当局が積極的に取り組んでいるのが、税目では預り金的性格が強い消費税。同年度も27件を告発しているが、このうち12件を受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)が占めており、化粧品の輸出等を行うA社のケースでは、取引事実がないにもかかわらず、国内の業者からの架空仕入(課税取引)及び国外の業者への架空輸出売上(免税取引)を計上する方法により、不正に多額の消費税の還付を受けていた。犯則税額は3億300万円。
また、目を光らせているのが、申告納税制度の根幹を揺るがすものである無申告ほ脱事案。同事案絡みの告発件数は21件で、このうち平成23年度に創設された「単純無申告ほ脱犯」を適用した件数は8件となっている。
なお、告発された査察事件の一審判決の状況をみると、同年中に143件に判決が言い渡され、全てで有罪判決が下され8人が実刑判決となった。このうち、不正に多額の消費税の還付を受けていた者は過去最高となる懲役7年6月が下されている。
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)