HOME ニュース一覧 還付金請求権の消滅時効に民法158条1項の類推適用は不可

税ニュース

還付金請求権の消滅時効に民法158条1項の類推適用は不可

 成年後見人を通じて行われた源泉所得税の還付請求を巡って、還付金請求権の消滅時効が完成しているか否か、具体的には民法158条1項(未成年者又は成年後見人と時効の停止)が類推適用されるか否かの判断が争われた事件で広島地裁(末永雅之裁判長)は、国において時効が停止することについて予見可能性、法的安定性を不当に害さないといえる事情があったとは言い難いことから、還付金請求権の消滅時効に民法158条1項を類推適用することはできないと判示して、請求を棄却した。

 この事件は、家庭裁判所で成年後見の開始及び成年後見人の選任の審判を受けた者が、選任された成年後見人を通じて、源泉徴収された2年分の所得税について還付請求をしたのが発端。しかし、消滅時効が完成していることを理由に還付を受けることができなかったため、国に対して還付金の支払いを求めて提訴した事案である。

 納税者側は、後見開始の審判を受けていなくても、事理弁識能力を欠く常況にある者は権利行使が困難であり、時効の停止を認めるべき実質的な必要性は同様にあることから、未成年者と成年被後見人に係る時効の停止を規定した民法158条1項の類推適用等によって保護されるべきであり、消滅時効は完成しないなどと主張して、還付を求めた。

 これに対して判決は、国税の還付金請求権に係る消滅時効期間満了前6ヵ月以内の間において、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるものの、未だ後見開始の審判を受けていない者について、その消滅時効期間満了前に後見開始の審判の申立てもされておらず、国において時効が停止することについて一定程度予見可能であったといえるような形式的、画一的事情が認められないなど、国の予見可性、法的安定性を不当に害さないといえる事情があったとはいい難いことからすれば、還付金請求権の消滅時効について民法158条1項を類推適用することはできないと判示して、請求を棄却する判決を言い渡した。

(2016.06.22広島地裁判決、平成27年(行ウ)第30号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

「生産性向上特別措置法」が6日に施行

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2018/img/img_shotoku_02_s.jpg
 成年後見人を通じて行われた源泉所得税の還付請求を巡って、還付金請求権の消滅時効が完成しているか否か、具体的には民法158条1項(未成年者又は成年後見人と時効の停止)が類推適用されるか否かの判断が争われた事件で広島地裁(末永雅之裁判長)は、国において時効が停止することについて予見可能性、法的安定性を不当に害さないといえる事情があったとは言い難いことから、還付金請求権の消滅時効に民法158条1項を類推適用することはできないと判示して、請求を棄却した。 この事件は、家庭裁判所で成年後見の開始及び成年後見人の選任の審判を受けた者が、選任された成年後見人を通じて、源泉徴収された2年分の所得税について還付請求をしたのが発端。しかし、消滅時効が完成していることを理由に還付を受けることができなかったため、国に対して還付金の支払いを求めて提訴した事案である。 納税者側は、後見開始の審判を受けていなくても、事理弁識能力を欠く常況にある者は権利行使が困難であり、時効の停止を認めるべき実質的な必要性は同様にあることから、未成年者と成年被後見人に係る時効の停止を規定した民法158条1項の類推適用等によって保護されるべきであり、消滅時効は完成しないなどと主張して、還付を求めた。 これに対して判決は、国税の還付金請求権に係る消滅時効期間満了前6ヵ月以内の間において、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるものの、未だ後見開始の審判を受けていない者について、その消滅時効期間満了前に後見開始の審判の申立てもされておらず、国において時効が停止することについて一定程度予見可能であったといえるような形式的、画一的事情が認められないなど、国の予見可性、法的安定性を不当に害さないといえる事情があったとはいい難いことからすれば、還付金請求権の消滅時効について民法158条1項を類推適用することはできないと判示して、請求を棄却する判決を言い渡した。(2016.06.22広島地裁判決、平成27年(行ウ)第30号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.06.11 16:28:39