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貸付金債権は元本によって評価するのが妥当と判断、棄却

 相続開始時に被相続人が同族会社に対して有していた貸付金債権の評価額が争われた事件で福岡地裁(青木亮裁判長)は、法人の経済的破綻が客観的に明白であるため回収の見込みがないか、又は回収が著しく困難であると客観的に認められるときにも該当するとはいえないことから、財産評価基本通達204に基づき債権の元本によって評価するのが妥当と判示して、相続人側の請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、母である被相続人の相続に係る相続税において、被相続人が相続開始時に同族法人の有限会社に対して有していた貸付金の価額を1000万円と評価して申告したのが発端。これに対して原処分庁が、貸付金債権の価額を4600万円余と評価して更正処分を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。

 そこで相続人側が更正処分の違法性を主張、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。つまり相続人側は、貸付先が回収不能の欠損企業であることから、貸付金債権の評価額は零円か、多くとも1000万円を超えることはないと主張してその取消しを求めたわけで、回収不能の状態にあるか否かが争点になった事案である。

 判決は、貸付先の有限会社の業務内容、収支状況及び財務内容、信用力、貸付金債権の弁済状況等の事実関係を精査した上で、相続開始時において、およそ回収不能な欠損企業であったとまでは認められない、信用力が皆無であったとは認められない、弁済の見込みがなかったともいえない、さらに現在も事業を継続し、評価通達205(1)の事由と同視できる事由は認められないと認定した。

 その結果、貸付金債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき(評基通205)に該当するとは言えないことから、評価通達204に基づき債権の元本によって評価すべきであると判示。結局、原処分庁が評価した価額である4600万円余が相当であり、更正処分、賦課決定処分も適法と判断して、相続人側の主張を斥ける判決を言い渡している。

             (2016.01.22福岡地裁判決、平成26年(行ウ)第43号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続開始時に被相続人が同族会社に対して有していた貸付金債権の評価額が争われた事件で福岡地裁(青木亮裁判長)は、法人の経済的破綻が客観的に明白であるため回収の見込みがないか、又は回収が著しく困難であると客観的に認められるときにも該当するとはいえないことから、財産評価基本通達204に基づき債権の元本によって評価するのが妥当と判示して、相続人側の請求を棄却する判決を言い渡した。 この事件は、母である被相続人の相続に係る相続税において、被相続人が相続開始時に同族法人の有限会社に対して有していた貸付金の価額を1000万円と評価して申告したのが発端。これに対して原処分庁が、貸付金債権の価額を4600万円余と評価して更正処分を行うとともに、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたわけだ。 そこで相続人側が更正処分の違法性を主張、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。つまり相続人側は、貸付先が回収不能の欠損企業であることから、貸付金債権の評価額は零円か、多くとも1000万円を超えることはないと主張してその取消しを求めたわけで、回収不能の状態にあるか否かが争点になった事案である。 判決は、貸付先の有限会社の業務内容、収支状況及び財務内容、信用力、貸付金債権の弁済状況等の事実関係を精査した上で、相続開始時において、およそ回収不能な欠損企業であったとまでは認められない、信用力が皆無であったとは認められない、弁済の見込みがなかったともいえない、さらに現在も事業を継続し、評価通達205(1)の事由と同視できる事由は認められないと認定した。 その結果、貸付金債権の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき(評基通205)に該当するとは言えないことから、評価通達204に基づき債権の元本によって評価すべきであると判示。結局、原処分庁が評価した価額である4600万円余が相当であり、更正処分、賦課決定処分も適法と判断して、相続人側の主張を斥ける判決を言い渡している。             (2016.01.22福岡地裁判決、平成26年(行ウ)第43号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.06.04 16:08:10