FX取引の差損益金等はロールオーバーの時点で確定
FX取引に基因して生じた差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利の確定時期の判断が争われた事件で国税不服審判所は、FX取引に係る約款及び契約締結前交付書面の記載内容から、同取引の差損益金及びスワップポイントに係る収入の原因となる権利はロールオーバーの時点において確定し、それらが確定した時点において所得の実現もあったと考えるのが相当と判断、審査請求を棄却した。
この事件は、FX取引(外国為替保証金取引)を行っていた審査請求人が税務調査を受けて同取引に基因する所得があったと認定され、所得税並びに復興特別所得税の期限後申告をしたのが発端となった。
その後、FX取引に基因する所得が過大に計上されていると考え、所得税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分を行うとともに、期限後申告に係る無申告加算税の賦課決定処分をし、過年分に生じた損失金額に係る繰越控除の適用を否認、更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人が各処分の取消しを求めて審査請求したという事案である。
請求人側は、FX取引において、未決済建玉の乗換えにより決済日を自動的に1営業日繰り延べる取引(いわゆるロールオーバー)によって生じた差損益金及びスワップポイント(差損益金等)は、損益の見込額に過ぎないため、ロールオーバーの時点において、差損益金等の収入の原因となる権利が確定したとはいえない旨を主張して、原処分の全部取消しを求めた。
裁決は、外国為替保証金取引はロールオーバーにより未決済建玉の約定価格が更新され、差損益金等が発生してその金額が確定し、その発生後、直ちに預託保証金に加算又は減算される他、それと同時に差損益金等が反映された預託保証金は振替可能額の範囲内で証券総合口座への振替請求が可能になると指摘。
その上で、差損益金等の収入の原因となる権利は、ロールオーバーが行われた時点で発生すると同時に、これを法律上行使することが可能になり、権利実現の可能性を客観的に認識することができる状態になったということができると認定した。結局、FX取引の差損益金等の収入の原因となる権利は、ロールオーバーが行われた時に確定したと認められると判断した上で、審査請求を棄却した。
(2017.08.02国税不服審判所裁決)
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