信用出資も消費税法上の出資に含まれると判断、棄却
信用を出資の目的とした出資の額が消費税法上の出資の金額に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、信用を出資の目的とした出資の額は消費税法上の出資の金額に含まれると解釈した上で、信用出資の額も1000万円超であることから、出資が行われた課税期間における消費税等の納税義務は免除されないと判断、審査請求を棄却した。
この事件は、行政書士法人である審査請求人が、消費税法上の新設法人に該当すると判断して消費税等の確定申告をした後、法人の設立時における出資の金額(1100万円)は信用出資の額であり、出資された金額は、消費税法12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)第1項が定める「事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額」には含まれないため、行政書士法人は同項が定める新設法人に該当せず、消費税等の申告義務は生じないと判断して更正の請求をしたのが発端。
しかし原処分庁が、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、請求人側がその取消しを求めて審査請求したという事案である。
信用出資の額が事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額に含まれるか否かが争点になったものであるが、請求人側は、消費税法12条の2第1項が定める「事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額」に関する消費税法上の定義規定がないため会社計算規則30条(資本金の額)の規定を借用すべきであり、これを借用すると信用出資は資本金概念には含まれないことから、消費税等の納税義務は生じないと主張して、取消しを求めたわけだ。
しかし裁決は、行政書士法人の性格を整理するとともに、消費税法上、納税義務が免除される新設法人の判定基準の趣旨に触れ、新設法人の事業規模を測定する基準である「資本金の額又は出資金の額」に信用出資を含めることが不合理であるとも言えないと解釈した上で、消費税法12条の2第1項が規定する出資の金額と行政書士法上の出資を別個に解釈する理由はないと指摘。結局、関係法令の定めからも、信用出資は消費税法が定める出資の金額に該当すると解され、信用出資の額も1000万円以上であるから消費税を納める義務は免除されないと判断、審査請求を棄却した。
(2017.06.15国税不服審判所裁決)
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