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名古屋の宝飾販売業者 脱税事件に異例の懲役7年 消費税不正還付含め17億円

 輸出免税の還付制度を使って約17億円を脱税したとして、消費税法違反などの罪に問われていた宝飾店販売業を営む被告に、大阪地裁は1月23日、懲役7年6カ月、罰金6千万円の実刑判決を言い渡した。脱税だけで執行猶予なしの実刑判決が下されること自体がまれだが、過去にない長期間の懲役刑を科された理由には、計画的かつ常習的とみなされた脱税の悪質性があるようだ。
 判決を受けたのは、名古屋市中区の宝飾品販売会社「ジュピター宝飾」の社長・長谷川彰被告(50)と、法人としてのジュピター宝飾など4社。起訴状などによると、長谷川被告は2010年~16年にわたって香港からの高級腕時計の架空仕入れを計上する手口で、ジュピター宝飾が消費税11億円の支払いを免れたほか、輸出免税制度を利用して4社合わせて約6億8千万円の不正還付を受けたという。
 消費税は、「国内で消費される財貨やサービスに対して課せられる税」であるため、国外との取引には原則的に課税されない。しかし、国内の事業者から商品を仕入れる際には消費税分が上乗せされている。そのため国外取引を行う事業者は、仕入れにかかった消費税額を申告することで、その分の還付を受けることができる。架空の海外取引を計上して消費税の還付を受ける手口は、国税庁が毎年まとめる法人による脱税事案でも常に取り上げられ、いわば消費税脱税の“花形”とも言えるスキームだ。
 大阪地裁の村越一浩裁判長は長谷川被告に対して、「脱税額はこれまで例がないほどに巨額」とした上で、「犯行には計画性と常習性があり悪質で、相当長期間の懲役は免れない」と述べ、懲役7年6カ月、罰金6千万円(求刑懲役10年、罰金9千万円)を言い渡した。また4社に対しても罰金総額3億4100万円(求刑罰金4億4100万円)を命じた。
 長谷川被告に下された懲役7年6カ月の実刑は、過去を見ても例がないほどの重い判決だ。2010年の法改正によって、脱税犯の懲役刑はそれまでの5年から最高10年に引き上げられたものの、実際に脱税だけで執行猶予なしの実行判決を言い渡されることはさほど多くない。11年には、27億9千万円を脱税した会社員の男性が「相続税で過去最高となる脱税額」を理由に執行猶予なしの実刑判決を受けたが、それでも懲役期間は2年6カ月だった。16年には家族の遺産を社会福祉法人に寄付したように見せかけて相続税約5億円を脱税した事件で実刑判決が下されたが、こちらも2年6カ月。同じ年には国税局員に現金を渡して法人税脱税に協力させた国税OB税理士が懲役6年の実刑判決を受けたが、これは税務のプロである税理士がその知識を悪用して脱税工作を主導したことが重く見られたものだ。これらの事件と比べてみても、今回の判決の懲役7年6カ月の重さが際立つ。
 今回の裁判では、脱税額の大きさに加え、7年間という犯行期間の長さ、常習性、さらには知人の会社が行った約1億2800万円の不正還付にも関与していたことなどが総合的に考慮され、過去に例のない長期間の懲役となったようだが、この先、今回の判決が“先例”となり、脱税事件の重罰化が進む可能性も考えられるところだ。

提供元:エヌピー通信社

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 輸出免税の還付制度を使って約17億円を脱税したとして、消費税法違反などの罪に問われていた宝飾店販売業を営む被告に、大阪地裁は1月23日、懲役7年6カ月、罰金6千万円の実刑判決を言い渡した。脱税だけで執行猶予なしの実刑判決が下されること自体がまれだが、過去にない長期間の懲役刑を科された理由には、計画的かつ常習的とみなされた脱税の悪質性があるようだ。 判決を受けたのは、名古屋市中区の宝飾品販売会社「ジュピター宝飾」の社長・長谷川彰被告(50)と、法人としてのジュピター宝飾など4社。起訴状などによると、長谷川被告は2010年~16年にわたって香港からの高級腕時計の架空仕入れを計上する手口で、ジュピター宝飾が消費税11億円の支払いを免れたほか、輸出免税制度を利用して4社合わせて約6億8千万円の不正還付を受けたという。 消費税は、「国内で消費される財貨やサービスに対して課せられる税」であるため、国外との取引には原則的に課税されない。しかし、国内の事業者から商品を仕入れる際には消費税分が上乗せされている。そのため国外取引を行う事業者は、仕入れにかかった消費税額を申告することで、その分の還付を受けることができる。架空の海外取引を計上して消費税の還付を受ける手口は、国税庁が毎年まとめる法人による脱税事案でも常に取り上げられ、いわば消費税脱税の“花形”とも言えるスキームだ。 大阪地裁の村越一浩裁判長は長谷川被告に対して、「脱税額はこれまで例がないほどに巨額」とした上で、「犯行には計画性と常習性があり悪質で、相当長期間の懲役は免れない」と述べ、懲役7年6カ月、罰金6千万円(求刑懲役10年、罰金9千万円)を言い渡した。また4社に対しても罰金総額3億4100万円(求刑罰金4億4100万円)を命じた。 長谷川被告に下された懲役7年6カ月の実刑は、過去を見ても例がないほどの重い判決だ。2010年の法改正によって、脱税犯の懲役刑はそれまでの5年から最高10年に引き上げられたものの、実際に脱税だけで執行猶予なしの実行判決を言い渡されることはさほど多くない。11年には、27億9千万円を脱税した会社員の男性が「相続税で過去最高となる脱税額」を理由に執行猶予なしの実刑判決を受けたが、それでも懲役期間は2年6カ月だった。16年には家族の遺産を社会福祉法人に寄付したように見せかけて相続税約5億円を脱税した事件で実刑判決が下されたが、こちらも2年6カ月。同じ年には国税局員に現金を渡して法人税脱税に協力させた国税OB税理士が懲役6年の実刑判決を受けたが、これは税務のプロである税理士がその知識を悪用して脱税工作を主導したことが重く見られたものだ。これらの事件と比べてみても、今回の判決の懲役7年6カ月の重さが際立つ。 今回の裁判では、脱税額の大きさに加え、7年間という犯行期間の長さ、常習性、さらには知人の会社が行った約1億2800万円の不正還付にも関与していたことなどが総合的に考慮され、過去に例のない長期間の懲役となったようだが、この先、今回の判決が“先例”となり、脱税事件の重罰化が進む可能性も考えられるところだ。提供元:エヌピー通信社
2018.01.26 09:56:31