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がん発症リスク減少目的の手術代も医療費控除

 遺伝性乳がんや卵巣がん症候群と診断された患者が受けた乳房切除手術費用や両側卵巣卵管切除手術費用も、所得税の医療費控除の適用対象になることが明らかになった。これは、病院からの照会に対して大阪国税局が文書回答したもの。

 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とは、遺伝子に生まれつきの病的変異があり、細胞に含まれる遺伝子が傷ついた時にこれを正常に修復する機能が失われているため、乳がん等を発症しやすい遺伝性疾患のこと。HBOCと診断された患者は、遺伝子に変異がない者と比べてがんの発症リスクが高いとされ、現状においては遺伝子の変異を直接治療する方法はないものの、がんを発症していない乳房の切除手術又は両側卵巣卵管切除手術を受けることにより、乳がん等を発症するリスクをほぼ確実に減少させることができるとされている。

 一方、所得税法上、いわゆる人間ドックその他の健康診断のための費用については、単なる診断だけで治療が伴わないことからその対価は医療費に該当しないが、健康診断の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その健康診断に引き続きその疾病の治療を行った場合には、医療費に該当するものと取り扱われている(所得税基本通達73-4)。

 照会者である病院は、HBOCが疑われる患者に対して遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行い、HBOCと確定診断された人の中で希望する患者には乳房切除手術又は両側卵巣卵管切除手術と、これらの手術後の経過観察を行っており、保険診療の対象ではないものの、保険診療の際の診療報酬の額に準じた額を自費診療として患者に請求していた。

 同病院は照会の中で、本件手術はHBOC治療の一環として行われることから、その費用は医師による診療又は治療の対価として医療費控除の対象として差し支えないとの考えを提示。また、本件遺伝子検査等は、その患者がHBOCであるか否かを診断するために行われるものであるため、その費用は原則として医療費控除の対象とはならないが、検査の結果、HBOCであることが判明し手術が行われる場合には、医療費控除の対象として差し支えないとの考えを示していた。

 この照会に対し大阪国税局は、本件照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の意見のとおりで差し支えないとした。

HBOCと診断された人が受けた手術費用に対する医療費控除の適用について

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 遺伝性乳がんや卵巣がん症候群と診断された患者が受けた乳房切除手術費用や両側卵巣卵管切除手術費用も、所得税の医療費控除の適用対象になることが明らかになった。これは、病院からの照会に対して大阪国税局が文書回答したもの。 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とは、遺伝子に生まれつきの病的変異があり、細胞に含まれる遺伝子が傷ついた時にこれを正常に修復する機能が失われているため、乳がん等を発症しやすい遺伝性疾患のこと。HBOCと診断された患者は、遺伝子に変異がない者と比べてがんの発症リスクが高いとされ、現状においては遺伝子の変異を直接治療する方法はないものの、がんを発症していない乳房の切除手術又は両側卵巣卵管切除手術を受けることにより、乳がん等を発症するリスクをほぼ確実に減少させることができるとされている。 一方、所得税法上、いわゆる人間ドックその他の健康診断のための費用については、単なる診断だけで治療が伴わないことからその対価は医療費に該当しないが、健康診断の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その健康診断に引き続きその疾病の治療を行った場合には、医療費に該当するものと取り扱われている(所得税基本通達73-4)。 照会者である病院は、HBOCが疑われる患者に対して遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行い、HBOCと確定診断された人の中で希望する患者には乳房切除手術又は両側卵巣卵管切除手術と、これらの手術後の経過観察を行っており、保険診療の対象ではないものの、保険診療の際の診療報酬の額に準じた額を自費診療として患者に請求していた。 同病院は照会の中で、本件手術はHBOC治療の一環として行われることから、その費用は医師による診療又は治療の対価として医療費控除の対象として差し支えないとの考えを提示。また、本件遺伝子検査等は、その患者がHBOCであるか否かを診断するために行われるものであるため、その費用は原則として医療費控除の対象とはならないが、検査の結果、HBOCであることが判明し手術が行われる場合には、医療費控除の対象として差し支えないとの考えを示していた。 この照会に対し大阪国税局は、本件照会に係る事実関係を前提とする限り、照会者の意見のとおりで差し支えないとした。
2017.11.09 10:28:46