旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権に資産の同一性がないと判断
新ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上、旧ゴルフ会員権の入会時に支払った預託金等を取得費として控除することができるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権には資産としての同一性がないことから預託金等を取得費として控除することは認められないと判断、審査請求を棄却した。
この事件は、ゴルフ会員権の譲渡により損失の金額が生じたことから、その譲渡損失を他の所得と損益通算して所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、当初取得したゴルフ会員権(旧ゴルフ会員権)と譲渡したゴルフ会員権(新ゴルフ会員権)の間に同一性が認められないことを理由に、旧ゴルフ会員権を取得した際に支払った登録料等の取得費該当性を否認した上で更正処分等をしてきたのが発端。そこで請求人が、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
請求人側は、譲渡したゴルフ会員権は、当初取得した旧運営会社の旧ゴルフ会員権が民事再生手続における再生計画に基づき、営業譲渡の際に新運営会社に預託金が減額されて引き継がれたものであり、譲渡所得の計算上、当初取得時に支払った登録料及び入会保証金(預託金等)は取得費として控除することができる旨主張して、原処分の全部取消しを求めた。
これに対して裁決は、譲渡所得の金額の計算上控除されるべき取得費は、譲渡資産と同一性が認められる資産の取得に要した金額をいうと解釈をした上で、再生計画及び営業譲渡契約の際に1)新運営会社は旧運営会社の債務及び旧会員契約を承継しない、2)ゴルフ場施設の利用を希望する会員は、新たに会員契約を締結する必要がある――ことからすると、旧ゴルフ会員権の優先的施設利用権と預託金債権はいずれも消滅していると認定した。
その事実関係を踏まえると、旧ゴルフ会員権と新ゴルフ会員権には資産としての同一性があるものとは認められない指摘。結局、請求人が入会時に支払った預託金等は、譲渡所得の計算上、取得費として控除することができない判断して、審査請求を棄却した。
(2017.01.06国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)