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遺産分割規定見直し、配偶者への贈与住居を対象から除く

 遺産分割に関する規定を見直して、婚姻期間が20年以上である夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者に贈与された住居は遺産分割の対象にしないようにすることが、法制審議会の民法(相続関係)部会で審議していた民法改正の要綱案のたたき台の中で明らかなった。法務省は、年内にも要綱案を取りまとめ、民法改正案を来年の通常国会に提出する予定だが、税制改正も視野に入る。

 要綱案のたたき台には、遺産分割に関する見直し等の中で、配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)として、「婚姻期間が20年以上ある夫婦の一方が他の一方に対し、その居住の用に供する建物又は敷地(居住用不動産)の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、民法903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものとして推定するものとする」との案が盛り込まれている。

 特別受益の持戻しは、共同相続人中に、被相続人から、遺贈や贈与による特別受益を得た者がいる場合、この特別受益財産を相続財産の価額に加えることをいうが、被相続人が持戻しを希望しない意思を表明している場合には、持戻しを行わないことになり、これを特別受益の持戻しの免除という。つまり、持戻しの免除の意思表示があれば、配偶者に贈与した住居は遺産分割から除かれて、相続の対象とはならないことになる。

 法制審の同部会は、配偶者保護のための方策等について、昨年6月、配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げる試案を公表したが、パブリックコメントにおいて反対する意見が多かったことから、今回新たに試案を示したものだ。相続税法には、20年以上連れ添った夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする「贈与税の配偶者控除」の特例規定がある。

 しかし、同特例を適用して贈与した財産でも、贈与者の死亡後は、特別受益として遺産分割協議や遺留分減殺請求の対象となってしまう。税法と民法は別物だからだ。今回の法制審の新しい案は、相続税法の「贈与税の配偶者控除」の考え方を民法にも連動させるものといえる。ちなみに、同特例の適用は、平成27年で1万3959件、1781億8900万円にのぼる。配偶者に居住用財産を残したいというニーズは高く、税制上の対応も注目される。

同要綱案のたたき台

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 遺産分割に関する規定を見直して、婚姻期間が20年以上である夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者に贈与された住居は遺産分割の対象にしないようにすることが、法制審議会の民法(相続関係)部会で審議していた民法改正の要綱案のたたき台の中で明らかなった。法務省は、年内にも要綱案を取りまとめ、民法改正案を来年の通常国会に提出する予定だが、税制改正も視野に入る。 要綱案のたたき台には、遺産分割に関する見直し等の中で、配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)として、「婚姻期間が20年以上ある夫婦の一方が他の一方に対し、その居住の用に供する建物又は敷地(居住用不動産)の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、民法903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものとして推定するものとする」との案が盛り込まれている。 特別受益の持戻しは、共同相続人中に、被相続人から、遺贈や贈与による特別受益を得た者がいる場合、この特別受益財産を相続財産の価額に加えることをいうが、被相続人が持戻しを希望しない意思を表明している場合には、持戻しを行わないことになり、これを特別受益の持戻しの免除という。つまり、持戻しの免除の意思表示があれば、配偶者に贈与した住居は遺産分割から除かれて、相続の対象とはならないことになる。 法制審の同部会は、配偶者保護のための方策等について、昨年6月、配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げる試案を公表したが、パブリックコメントにおいて反対する意見が多かったことから、今回新たに試案を示したものだ。相続税法には、20年以上連れ添った夫婦間で住宅や住宅取得資金の贈与が行われた場合には、2千万円まで非課税とする「贈与税の配偶者控除」の特例規定がある。 しかし、同特例を適用して贈与した財産でも、贈与者の死亡後は、特別受益として遺産分割協議や遺留分減殺請求の対象となってしまう。税法と民法は別物だからだ。今回の法制審の新しい案は、相続税法の「贈与税の配偶者控除」の考え方を民法にも連動させるものといえる。ちなみに、同特例の適用は、平成27年で1万3959件、1781億8900万円にのぼる。配偶者に居住用財産を残したいというニーズは高く、税制上の対応も注目される。
2017.07.25 09:31:33