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外貨建借入金の借換時の為替差損益は評価上のものと認定、棄却

 借換え時点において、既存の外貨建借入金の借入時の円換算額と新規の外貨建借入金により取得した外貨による返済額の円換算額との差額つまり為替差益を所得として認識すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、借換えの際に計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎず、課税対象の収入としては認識されないと判断、棄却した。

 この事件は、審査請求人が金融機関から借り入れた外貨建借入金を返済した取引を巡って、原処分庁が所得税法上の外貨建取引に該当し、当初の借入時の為替相場による円換算額と最終的な返済時の為替相場による円換算額との差額(為替差益)は、雑所得に該当するなどと判断して所得税の更正処分等をしてきたのが発端。

 これを不服とした請求人が、当初の借入時から最終的な返済時までの間に繰り返し行われた各借換え時においても為替差損益を認識して雑所得を計算すべきであると主張して、更正処分等の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 裁決はまず、収入の原因たる権利が確定的に発生した時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)が採用されている(所法36①)と指摘。つまり、収入という形態において実現した利得のみを課税の対象としているから、外貨建借入金の借換え時に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には課税の対象となる収入としては認識しないという判断を示したわけだ。

 その上で事実関係を整理し、金融機関との間で貸付与信枠に係るファシリティー契約が結ばれ、同契約に定められた貸付与信限度額、金利の計算方法及び担保等の条件に基づき、同一支店から同一の通貨で借換えが行われ、借換えに係る既存の借入金と新たな借入金の内容に実質的な変化が生じたとは認められないと認定。その結果、借換え時において、既存の借入金の返済により計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎないから、課税の対象となる収入としては認識されないと判断、審査請求を棄却した。

                        (2016.08.08国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 借換え時点において、既存の外貨建借入金の借入時の円換算額と新規の外貨建借入金により取得した外貨による返済額の円換算額との差額つまり為替差益を所得として認識すべきか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、借換えの際に計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎず、課税対象の収入としては認識されないと判断、棄却した。 この事件は、審査請求人が金融機関から借り入れた外貨建借入金を返済した取引を巡って、原処分庁が所得税法上の外貨建取引に該当し、当初の借入時の為替相場による円換算額と最終的な返済時の為替相場による円換算額との差額(為替差益)は、雑所得に該当するなどと判断して所得税の更正処分等をしてきたのが発端。 これを不服とした請求人が、当初の借入時から最終的な返済時までの間に繰り返し行われた各借換え時においても為替差損益を認識して雑所得を計算すべきであると主張して、更正処分等の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。 裁決はまず、収入の原因たる権利が確定的に発生した時点で所得の実現があったものとして課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)が採用されている(所法36①)と指摘。つまり、収入という形態において実現した利得のみを課税の対象としているから、外貨建借入金の借換え時に計算される為替差損益が単に評価上のものにとどまる場合には課税の対象となる収入としては認識しないという判断を示したわけだ。 その上で事実関係を整理し、金融機関との間で貸付与信枠に係るファシリティー契約が結ばれ、同契約に定められた貸付与信限度額、金利の計算方法及び担保等の条件に基づき、同一支店から同一の通貨で借換えが行われ、借換えに係る既存の借入金と新たな借入金の内容に実質的な変化が生じたとは認められないと認定。その結果、借換え時において、既存の借入金の返済により計算される為替差損益は単に評価上のものにすぎないから、課税の対象となる収入としては認識されないと判断、審査請求を棄却した。                        (2016.08.08国税不服審判所裁決)
2017.06.27 13:13:36