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売買契約書に実体がないことを理由に、代金債権の存在を否定

 相続税開始時に不動産の売買代金債権が存在しているか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、不動産に係る親子間の売買契約書は存在するものの、実体を伴わない架空の内容が記載された契約書であると認定した上で不動産の売買に係る代金債権は発生していないと判断、原処分を全部取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、相続税の申告を巡って、原処分庁が被相続人名義の不動産の譲渡代金債権が課税価格に算入されると判断、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人がその全部取消しを求めた審査請求したという事案である。

 不動産売買に係る代金債権の存否が争点になった事案であるが、原処分庁側は、被相続人が不動産を売却したものの、相続開始時点において売買契約書記載の代金が支払われていなかったことから、被相続人はその代金に相当する代金債権を有していたと認定、相続税の課税価格に算入されるべき相続財産に該当する旨主張するとともに、そもそも、不動産の所有者は請求人であり、被相続人が所有者であったことはないとも主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 これに対して裁決はまず、不動産の売買契約書は存在するものの、1)売買契約書の作成の際に買主である子が関与していない、2)売買契約書において、所有権移転登記の手続きは売買代金全額の支払いと引替えに行うとされているが、現在に至るまで売買代金は全く支払われていない事情を指摘。

 その上で、3)所有権移転登記が完了しているのは不自然であり、4)子が請求人と作成した金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、金員の返済もしていない、5)請求人及び子の間では不動産に係る子の所有名義は便宜上のものであり、真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されている、さらに6)子が不動産の所有者としてこれを管理、支配している形跡が伺われない――等の事実関係も指摘した。

 結局、そうした事情を踏まえれば、売買契約書は実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であるものと認めるのが相当であり、代金債権も発生していないというべきであると判断して、原処分を全部取り消している。

                        (2016.06.28国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム

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 相続税開始時に不動産の売買代金債権が存在しているか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、不動産に係る親子間の売買契約書は存在するものの、実体を伴わない架空の内容が記載された契約書であると認定した上で不動産の売買に係る代金債権は発生していないと判断、原処分を全部取り消す裁決を言い渡した。 この事件は、相続税の申告を巡って、原処分庁が被相続人名義の不動産の譲渡代金債権が課税価格に算入されると判断、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人がその全部取消しを求めた審査請求したという事案である。 不動産売買に係る代金債権の存否が争点になった事案であるが、原処分庁側は、被相続人が不動産を売却したものの、相続開始時点において売買契約書記載の代金が支払われていなかったことから、被相続人はその代金に相当する代金債権を有していたと認定、相続税の課税価格に算入されるべき相続財産に該当する旨主張するとともに、そもそも、不動産の所有者は請求人であり、被相続人が所有者であったことはないとも主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。 これに対して裁決はまず、不動産の売買契約書は存在するものの、1)売買契約書の作成の際に買主である子が関与していない、2)売買契約書において、所有権移転登記の手続きは売買代金全額の支払いと引替えに行うとされているが、現在に至るまで売買代金は全く支払われていない事情を指摘。 その上で、3)所有権移転登記が完了しているのは不自然であり、4)子が請求人と作成した金銭消費貸借契約書記載の金員を受け取っておらず、金員の返済もしていない、5)請求人及び子の間では不動産に係る子の所有名義は便宜上のものであり、真実は請求人が所有者であることを確認する旨の合意書が作成されている、さらに6)子が不動産の所有者としてこれを管理、支配している形跡が伺われない――等の事実関係も指摘した。 結局、そうした事情を踏まえれば、売買契約書は実体を伴わない架空の内容を記載した契約書であるものと認めるのが相当であり、代金債権も発生していないというべきであると判断して、原処分を全部取り消している。                        (2016.06.28国税不服審判所裁決)
2017.05.30 13:02:01