無申告等の意図を外部からもうかがい得ると認定、棄却
所得税等の過少申告、消費税等の無申告が、国税通則法68条1項が定める重加算税の賦課要件を満たすか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図が外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、所得税等を過少申告し、消費税等が無申告だったと認定した上で重加算税の賦課要件を満たしていると判断、審査請求を棄却した。
この事件は、原処分庁が、農産物及び肉用牛(農産物等)の生産販売を行う審査請求人が所得税及び復興特別所得税の事業所得に係る売上げの一部を脱漏するとともに、消費税及び地方消費税を納める義務が免除されないにもかかわらずこれらの申告をしなかったと認定、所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分並びに消費税等の決定処分及び重加算税の賦課決定処分等を行ったのが発端。
これに対し請求人が、隠ぺい又は仮装に該当する行為はないと反論して、所得税等及び消費税等に係る重加算税の賦課決定処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。請求人側は、自身が下書用の収支内訳書を作成した行為は単なる過少申告行為であり、隠ぺいしようという確定的な意図の下に行った申告ではなく、隠ぺい又は仮装に該当する行為はないから、重加算税の賦課要件は満たされない旨主張して原処分の取消しを求めたわけだ。
しかし裁決は、請求人が消費税等の負担を免れるため、7年間という長期間にわたって農産物等の販売年間取引実績表等によってその販売金額の合計額が1000万円を超えていることを認識していたにもかかわらず、その合計額が1000万円を超えないよう、農産物等の販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市の申告相談で市職員に提示することによって同職員に農産物等の販売金額を過少に記載させ、その合計額がいずれも1000万円以下となる収支内訳書及び確定申告書を作成させ続けていたと認定した。
その上で、請求人は当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、消費税等については期限内に確定申告書を提出しなかったと認められることから、重加算税の賦課要件を満たすというべきであると判断して、審査請求を棄却している。
(2016.09.30国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム