新興国マーケットの動向
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:06/14/2012  提供元:税務研究会・税研情報センター



 新興国での中間所得層拡大は日本企業にとっても大きなビジネスチャンスです。


●新興国マーケットをめぐる変化




 国内市場が少子高齢化によって頭打ちとなる中、新興国マーケットを見据えた事業戦略が大企業ばかりでなく中堅・中小企業でも加速しています。新興国は豊富な地下資源や人口増加を背景にその潜在的なマーケットが大きいのが特徴で、G20における新興国としては中国、インド、ブラジル、トルコ、ロシア、南アフリカ等の国々があげられます。

 経済産業省が今年の2月に発表した調査結果によると、21の国、地域の新興国全体で2020年には年収5,000ドルを超える中間層が新たに13.4億人(2010年比)増加すると見込まれています。これらの新興国で年収5,000ドルの中間層が拡大する時期は、1960年代の日本の収入水準に相当する時期で、洗濯機や冷蔵庫などの各種家電製品の保有率が急速に上昇しました。年収7,000ドルを超えると新車の保有率が上昇し、10.000ドルを超えるとサービスへの消費性向が急速に上昇します(経済産業省「第14回通商政策部会2012年2月16日」より)。

 新興国マーケットの拡大は、日本においても大きなビジネスチャンスとして捉えることができるでしょう。


●官民オールジャパンの取り組み

 新興国のマーケット拡大を見据えて政府も「新成長戦略実現2011」(平成23年1月25日)で新興国、特にアジアにおけるビジネス展開を推進しています。

 都市交通や高速道路、発電など大型インフラの建設・維持・管理の需要が高い新興国に対して、個々の設備や技術を輸出するだけでなく、インフラ事業の設計・建設から完成後の管理運営・メンテナンスまでを含めた「パッケージ型インフラ海外展開」の実現も推進し始めました。

 既に2011年9月には、海外事業を幅広く展開できるよう、NEXCO等の高速道路会社5社で共同設立したJEXWAYが、新興国のインフラ整備事業に、日本の技術を売り込むべく活動を始め、JR東日本など鉄道7社が設立した「日本コンサルタンツ(JIC)」は今年4月より本格的に新興国向け営業を開始しています。

 新興国進出にあたっては、政府の支援が欠かせないこと以外にもインフラが未整備、法制度の運用が不透明といった一企業単独で進出することの困難がありますが、中小企業の海外進出を支援する補助や融資制度も始まり、今後ますます海外展開が拡大するものと思われます。国内経済が厳しさを増す中で、新興国マーケットの動向は、日本企業の景気に好影響を与えるものと期待されています。

【ニュースアンテナ6月号 税研情報センター】