海外進出企業の実態調査
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:12/15/2014  提供元:税務研究会・税研情報センター



 アジア新興国での海外事業展開が今後も続くことが予想されます。


●調査結果の概要




 政府は成長戦略の一つとして、海外市場獲得のための戦略的取組をするという目標を掲げ、具体的には2020年までに中堅・中小企業等の輸出額を2010年比で2倍にし、潜在力ある中堅・中小企業に対して海外展開支援体制を強化する政策を進めています。外務省発表の「海外進出日系企業実態調査」によると、2013年10月1日時点で、海外に進出している日系企業の総数(拠点数)は、少なくとも6万3,777拠点で、前年より2,989拠点(4.9%)の増加となり、過去最多を更新しました。
 

 帝国データバンクが2014年9月に行った「海外進出に関する企業の意識調査」によると、直接・間接のいずれかで海外に進出している企業は全体の27.0%で、4社に1社は海外との関わりをもって事業を行っていることが明らかになりました。規模別に見ると、大企業(35.8%)、中小企業(24.4%)、小規模企業(15.0%)で、業界別では、製造が42.8%、卸売が31.2%という結果です。海外に直接進出している企業のうち、3社に2社の65.0%が中国に進出し、特に繊維関連の製造・卸売における中国進出が目立っています。


●海外進出企業の課題と今後

 2013年11月に日銀が発表したレポートによると、中堅・中小企業が海外での事業拡大を図る理由として、「海外での需要の増加(75.6%)」、「国内での需要の減少(56.8%)」、が多く、次いで「取引先企業の海外進出(38.3%)」、「円高の影響(17.4%)」という順になっています。一方、上記の帝国データバンクの調査によると、直接進出企業のうち「撤退または撤退の検討あり」の企業は39.4%という結果で、海外に進出した企業の課題も浮き彫りになりました。

 海外からの撤退・撤退検討時に直面した課題としては、「資金回収が困難(38.3%)」が最も多く、次いで「現地従業員の処遇(31.8%)」、「法制度・会計制度・行政手続き(29.5%)」、「為替レート(26.5%)」と続きます。大企業では資金回収や法制度、現地従業員との関係を課題として挙げる企業が多かった一方で、小規模企業では約4割の企業が為替レートを課題に挙げています。

 海外進出時の課題はあるものの、調査企業の56.3%が「撤退は考えていない」と回答しており、今後も引き続き積極的な海外事業展開の意向が窺えます。今後の海外進出先として、生産拠点はベトナムが10.9%でトップとなり、販売先では中国が12.2%でトップとなりました。今後、ベトナム等アジア新興国への事業展開が増えることが予想されます。

【ニュースアンテナ12月号 税研情報センター】