マイナス金利政策の影響
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:06/15/2016  提供元:税務研究会・税研情報センター



 日銀による初のマイナス金利政策により、様々な影響が広がっています。

●「マイナス金利政策」とは

 日銀は1月29日に、日本で初めてマイナス金利政策の導入を発表し、2月16日から導入しました。マイナス金利政策とは、中央銀行が政策金利をゼロ%よりも低い水準にする政策のことで、金融機関から日銀の当座預金で預かっている一部の預金の金利をマイナスに引き下げる政策です。この政策によって、民間銀行は日銀に資金を預けた場合、金利を支払う必要が出てくるため、民間企業の融資や有価証券の購入に資金を振り向ける効果を見込んでいます。さらに、日銀が供給した資金を実態経済に回りやすくする狙いもあります。
 マイナス金利政策は、個人や企業が民間銀行に預ける預金金利をマイナスにするわけではなく、欧州では、スイスやデンマークなどの中央銀行が導入しています。
 マイナス金利政策を導入した背景には、長年にわたるデフレがあります。また、年明け以来、原油価格の下落に加えて中国をはじめとする新興国・資源国経済の先行き不透明感などによる金融市場の世界的な不安定化があげられています。デフレマインドの転換が遅れてしまうリスクを未然に防ぎ、物価2%上昇の目標を実現させるために必要な措置であったと日銀総裁は講演で話しています。

●マイナス金利政策の影響

 マイナス金利政策によってメガバンク3行およびゆうちょ銀行の2016年5月13日現在の普通預金金利は0.001%まで引き下げられています。また国債利回りは大きく低下し、残存期間約10年までがマイナス化しています。MMFを取り扱う資産運用会社は、MMFの運用が難しくなったとして、預かった資金を顧客に返還する方向になりました。資産運用にはマイナスの影響ですが、住宅ローン金利は下がり、10年固定で借りても1%以下とする銀行もあるなどマイナス金利政策にはプラスの効果もあります。

 東京商工リサーチが企業向けに4月に実施した「マイナス金利に関するアンケート」調査の結果、「マイナス金利の導入による影響は受けていない」が全体の62.5%を占めており、資本金1億円未満の企業は低利での借り換えニーズが比較的高く、新規の資金調達には、資本金1億円以上の企業より前向きと報告されています。

 マイナス金利政策が経済を活性化し投資促進の手立てとなるか、今後の動向が注目されます。

参考資料: 日銀HP、日経新聞HP、東京商工リサーチHP、日銀黒田総裁の2016年3月7日読売国際経済懇話会における講演