2015年版 中小企業・小規模企業白書
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:06/11/2015  提供元:税務研究会・税研情報センター



 2015年版中小企業白書・小規模企業白書が公表されました。


●中小企業・小規模企業を取り巻く環境




 政府は4月24日に、2015年版中小企業白書、小規模企業白書を閣議決定し、公表しました。中小企業白書は中小企業基本法第11条に基づく年次報告書で、今回で52回目になります。また、2014年6月成立の小規模企業振興基本法に基づく「小規模企業白書」を初めて策定しました。

 小規模企業白書の対象となる「小規模事業者」は個人事業者も含まれ、中小企業約385万者のうち9割近くを占める約334万者です。
 

 中小企業の景況は2013年1-3月期以降、着実に改善を続けてきましたが、2014年4-6月期に悪化し、その後は横ばいの時期もありましたが、足下では持ち直しの動きも見られます。しかし、中小企業・小規模事業者は原材料・仕入単価の上昇を販売価格に転嫁することが難しく、採算は依然として厳しい状況です。また、グローバル化の進展等を背景に、大企業と中小企業・小規模事業者との間の相互依存関係は希薄化し、中小企業・小規模事業者は自ら需要を獲得する必要に迫られています。

 長期的な成長パターンで見てみると、同じ規模の企業同士で収益力に差が出てくるなど、状況の変化が見られます。とりわけ小規模企業同士で差が開いており、低収益企業の収益力が低下する一方で、高収益の小規模企業の収益率は大企業をも凌ぐ状況です。


●さらなる飛躍のための課題

 中小企業・小規模事業者が収益力を向上させる上で課題となっているものとして、白書では「イノベーション・販路開拓」「人材の確保・育成」を取り上げています。イノベーション・販路開拓については、商圏が広い事業者ほど積極的に取り組んでいる実態がある一方で、商圏が狭い企業も、そうした取組を行うことで、利益を伸ばす可能性があることを示しています。

 中小企業・小規模事業者の従業員の不足感は全国的に高まっており、4割近くの中小企業・小規模事業者が人材の確保に腐心しています。人材に関する課題は、販路開拓時の課題としても取り上げられているばかりでなく、研究開発・製造、IT関連等、多岐にわたる経営の中核となる人材の不足感が強く、中小企業が必要な人材を十分に確保できていない実態がアンケート調査でも浮き彫りになりました。

 中小企業・小規模事業者は「地域」に根ざし、地域資源の活用や地域活性化の取組みの中心的な役割を担っています。小規模企業白書では経営者の高齢化や後継者不足が課題と分析する一方で、地域との密接なつながりを持つ小規模事業者が地域とともに逞しく活動する様を報告しています。

【ニュースアンテナ6月号 税研情報センター】