消費税増税再延期
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作成日:07/15/2016  提供元:税務研究会・税研情報センター



 消費税増税再延期は社会保障や税制、財政健全化などに影響を及ぼす見通しです。

●消費税増税再延期の経緯

 平成28年6月1日、安倍内閣総理大臣は、消費税率10%への引上げ及び軽減税率制度の導入時期を平成31年10月とする旨を表明しました。

 消費税増税は、野田政権時において、法案が成立しました。社会保障の安定財源の確保と財政健全化を同時に達成することを目指すため、税制抜本改革法において消費税率を平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日から10%へ引き上げること、消費税の使途を年金、医療、介護、少子化対策に限定(社会保障目的税化)することとしました。さらに、同法附則第18条では、経済状況等を総合的に勘案して行う旨の「景気判断条項」が規定されました。

 平成26年11月、安倍総理は駆け込み需要に伴う反動減等の影響が長期化する中で、10%引上げを1年半延長する判断を下しました。その際、平成29年4月の増税は景気判断条項を付すことなく確実に実施するとし、再び延期することはないと断言していました。

 しかし、今回2年半の再延期となり、その会見では、「内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。これまでのお約束とは異なる“新しい判断”をした」と発言しました。

●再延期の影響

 消費税増税の再延期は、次のような影響を及ぼす見通しです。

(1)社会保障

 引上げの再延期によって、社会保障の充実に充てる予定だった1兆3,000億円程度が不足する見通しです。

(2)税制

 消費税率が10%に引き上げられるのに合わせて平成29年4月から導入が予定されていた軽減税率は先送りが明言されました。一方で、インボイス制度導入時期については言及されていません。また、車体課税、住宅ローン減税、住宅資金贈与の非課税措置等、他の税制改正にも影響があることが予想されます。

(3)財政健全化

 消費税増税再延期は、1,000兆円を超える借金を抱える財政再建にも大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

 さらに、国債の格付けにも影響を及ぼし、格付投資情報センター(R&I)は日本国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げたと発表しました。

参考資料: 財務省HP、財政金融委員会調査室「消費税率引上げの影響と今後の課題」(2015年9月)