再生医療ビジネスの今後
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:05/15/2013  提供元:税務研究会・税研情報センター



 世界でもトップレベルの日本の再生医療研究は、周辺ビジネスを含めた市場拡大が期待されています。


●市場規模の予測




 再生医療は、手術・投薬など従来の手法では治療困難とされる疾患の根本治療に途を開くものと、世界的にも高く期待されています。山中伸弥教授のノーベル賞受賞で、我が国の再生医療は一段と関心が集まり、再生医療の特性を踏まえた安全性の基準の整備や、細胞加工、品質管理のための制度的枠組みの構築、事業環境の整備が急務となっています。
 

 再生医療の実用化・産業化は周辺産業を含め、大きな経済効果を生み出すことが期待されています。例えば細胞の培養に必要な試薬やデバイスといった消耗品、培養装置、品質検査装置など、再生医療に関連するマーケットは多様で、2012年時点で国内の再生医療の製品・加工品市場規模は約90億円存在すると言われています(経済産業省「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」最終報告書)。さらに、再生医療の将来市場規模予測(世界)は、2020年に1.0兆円、2030年に12兆円、2050年に38兆円の市場が見込まれています。現在実用化されている再生医療製品の約77%の市場が米国によるものですが、大量生産が可能なiPS細胞を始めとする再生医療製品の普及により、新興国を中心に市場規模の拡大が予想され、我が国の海外市場獲得が大いに期待されています。


●今後の課題

 再生医療がもたらすメリットとして、難病の根治、看病や介護の負担軽減、医療費等社会保障費の抑制等が挙げられます。一方、再生医療は従来の医療とは異なる性格を有する治療方法であるため、実用化・産業化に向けては、再生医療の特性を十分踏まえるとともに、これに付随する諸課題を解決する等の環境整備を図ることが必要であると指摘されています。

 実用化・産業化における課題としては、(1)制度に関する課題と、(2)コストに関する課題の主に2つがあります。医師法・医療法の下で、医師・医療機関によって行われる再生医療は、細胞・組織の採取から加工、検査、移植までの全作業を医師・医療機関自らが実施しなければならず、非効率性・コスト高の原因となっています。また、再生医療が多くの患者の治療の選択肢となるためには、十分な安全性を確保した上でコストの合理化を図ることが不可欠となります。

 再生医療に対する社会的期待は高い一方で、再生医療に関する効果とリスクについての理解はまだ十分とは言えません。また、ビジネスを進める上での保険制度も未整備の状況です。これらの課題を解決することで、再生医療分野のみならず周辺領域も含めたマーケット拡大が期待されています。

【ニュースアンテナ5月号 税研情報センター】