事業承継税制小規模事業者さらに使いやすく
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:11/25/2016  提供元:エヌピー通信社



 事業承継の際に生じるさまざまな税負担を軽減する「事業承継税制」で、規模が一定以下の小規模事業者や自然災害などで被害を受けた企業に対して適用要件を緩和する方針を、政府が固めた。同税制を利用すると、二代目社長に課される相続税や贈与税の負担を実質免除することができる。

 事業承継税制は、中小企業が事業を承継する際に、相続や贈与で譲り渡した自社株にかかる税負担を猶予するという制度。譲り渡した自社株と後継者がもともと持っていた自社株の合計のうち、発行済議決権株式の3分の2までの部分について、相続税なら評価額の8割、贈与税なら全額が納税猶予される。猶予といっても要件を満たしている限り納める必要はなく、二代目後継者の死亡や倒産、あるいは三代目へのさらなる事業承継が行われれば、猶予されていた税負担は免除となる。

 同税制を利用するためには、承継後5年間の平均で雇用の8割を維持しなければならない。導入当初は「5年間毎年8割維持」が要件だったが、ハードルが高すぎるとして2015年度税制改正で緩和された。しかし、それでも小規模事業者や、やむを得ない状況によって雇用削減せざるを得ない事業者にとって厳しすぎるとの声があり、今回のさらなる要件緩和に至った。

 政府が検討しているのは、従業員数5人以下(製造業は20人以下)の小規模事業者については、現行「8割」となっている雇用維持要件を「6割」に緩和するというもの。さらに同税制の対象であれば企業規模を問わず、大規模な自然災害によって被害を受けたり、元請け大企業の不祥事などを原因に人員削減に至ったりした時に、雇用維持要件を問わずに猶予を受け続けられるようにする。

 猶予を受けていた事業者がその後雇用要件を満たせなくなると、それまで猶予されていた税負担の納税義務が発生し、さらに猶予していた間の利子税も納めなければならない。先行きが見えないなかで、将来的な猶予取り消しリスクを恐れて制度利用に踏み切れない事業者も多く、中小企業の円滑な事業承継の妨げとなっていた。