動き出したフィンテック銀行のIT企業買収が可能に改正銀行法が成立
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:05/27/2016  提供元:エヌピー通信社



 銀行からIT(情報技術)企業への出資制限を緩和する改正銀行法が可決、成立した。金融界では、最新のIT技術を駆使した新しいサービス「フィンテック」の導入に各社が注目しているが、法改正で銀行によるITベンチャーの買収も可能となる。銀行間の争いはこれまでのような単純な金利競争からサービス内容の付加価値を競う時代に移ったと言えそうだ。

 現行法では、銀行から一般企業への出資は5%(持ち株会社は15%)までに制限されている。改正法ではこの制限を撤廃。金融庁が個別に認可することを前提に、銀行の金融サービスを高めると判断されたIT企業を買収し、完全子会社として傘下に収めて積極的に事業展開することが可能となる。

 フィンテックはファイナンスとテクノロジーを合わせた米国発の造語。決済や送金、融資などに最新のIT技術を導入したサービスを指し、米シリコンバレーを中心に次々と新しいサービスが生まれ投資も活発に行われている。「フィンテックの進歩は早い。このままでは取り残されてしまう」(金融庁幹部)と関係者の危機感は強く、今回の法改正につながった。今後1年以内に施行される。

 国内でもメガバンクを中心に、行内に専門部署を作るなど徐々に取り組みが始まりつつある。法改正により、今後はより具体的なサービス拡充に向けた経営戦略が各行に問われる。ただ「横並び意識の強い金融業界では他行に先駆けた革新的なサービスは生まれにくい」(金融業界に詳しい弁護士)との見方もある。フィンテックのサービスは国境を越えて提供されるものも多く、米国では、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが「われわれはグーグルやフェイスブックなどと競合することになるだろう」と危機感をあらわにしている。邦銀も意識改革を迫られそうだ。