今年の法人税調査は赤字が狙われる!?
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:11/20/2009  提供元:エヌピー通信社



 現在、税務調査シーズン真っ只中。法人税収が大幅に落ち込んでいることから、なんとしても税収アップを図りたい税務署では、署を挙げての税務調査を展開している。

 国税庁がこのほど公表した法人税の調査事績によると、同20事務年度に行われた無所得申告法人への実地調査件数は、全調査件数の約3分の1にあたる4万9325件。前年度から3千件ほど増加しており、当局が赤字法人の調査に力を入れていることが分かる。

 同20事務年度は、黒字申告法人割合が29.1%と過去最低を記録するなど、不況が長引くなかで、赤字法人が大幅に増加。こうした実状に便乗して、本来黒字申告すべきところを赤字法人と仮装することで、課税逃れをする法人が後を絶たない。同20事務年度の無所得申告法人のうち、なんらかの非違があったものは3万4333件で、不正経理を行っていたものは1万2064件。また、実地調査した無所得申告法人の14%にあたる6956件は本来黒字申告すべき法人だったという結果が出ている。こうした「不況に便乗した黒字隠し」は年々手が込んできているため、税理士のなかでは「当局は、赤字仮装法人に深度ある調査を実施している」と見る向きが強い。

 税務調査の基本パターンとして、売上利益とたな卸し高に大きな変化は生じていないか、交際費の処理が適正に行われているか、などといった項目がチェックされるのはもちろん、社員から聴取した給与額が帳簿額と合致しているか、消耗品のなかにたな卸し資産とすべき貯蔵品はないか、雑費のなかに役員の個人負担とすべき項目が含まれていないか、といった“重箱の隅”をつつくような調査が展開される。

 「領収書」も調査の重点項目だ。おもに、役員個人の買い物を経費に上乗せしていないか、ということを確認するために行われるもので、手書きのもの、ゼロの多い金額のものは念入りにチェックされる。

 また、今年は欠損金の繰戻還付制度を適用した法人や国際取引に対する調査も厳しさを増しそうだ。とくに、国際取引に関する調査では、非居住者に対する給与・報酬や特許権・著作権などの使用料に源泉徴収の漏れがないか精査。このほか、企業の海外送金を注視しており、海外に多額の送金を行っている法人については、金融機関から税務署に提出された海外送金調書を厳しくチェックしている。