証券業協会が指針アナリストの取材を規制決算前の未公開情報の取得禁止
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:08/17/2016  提供元:エヌピー通信社



 節税効果などが売り物の少額投資非課税制度(NISA)開始や確定拠出年金の加入対象拡大を通じ、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させようと官民の取り組みが広がるなか、日本証券業協会はこのほど、証券アナリストによる企業調査や投資家向け情報伝達に関する指針案をまとめた。業績に関する未公表の情報を取得することを禁じ、意図せず取得した場合も投資家に伝えないことなどを規定。証券市場の公正性・透明性を確保する狙いだ。

 指針案は、情報取得の在り方について「未公表の決算期の業績に関する情報の取材等は例外を除き行わない」と明記。取得できる情報を▽定量的な情報のうち未公表の決算期の業績と無関係な情報▽公表済みの決算期の情報▽未公表の決算期の情報で業績以外に関する定性的な情報▽来期以降の通期・中期計画や将来予想など―に整理した。取得した情報の取り扱いについては「公表済みのアナリスト・レポートに記載がなく、投資判断に影響を与える可能性がある情報は(レポート以外の方法で)伝達してはならない」とした。

 指針案策定の背景には過去の不適切行為がある。証券取引等監視委員会は2015年12月以降、ドイツ証券とクレディ・スイス証券のアナリストが、企業から取得した業績に関する未公表の重要情報を一部の顧客投資家らに提供したなどとして、金融商品取引法に基づき業績処分を出すよう金融庁に勧告。いずれも金融庁が業務改善命令を出した。

 証券業界では従来、アナリスト・レポート自体の取り扱いに関する社内規則はあったが、アナリストの行動やレポート以外の情報伝達行為については業界横断のルールが明確になっていなかった。指針案の策定・公表に際し、日本証券業協会は「新たな指針を示すことで透明性・公正性を確保して市場の信頼性向上につなげたい」(稲野和利会長)としている。

 指針案は、1カ月間の意見公募を経て必要な修正を施し、10月にも適用を開始する。