下請法指導件数過去最多 「減額」で4億8千万円返還
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:11/04/2011  提供元:エヌピー通信社



 公正取引委員会が平成23年度上半期に行った下請法違反の指導件数が、半期ベースで過去最多となったことがわかった。

 23年度上半期の指導件数は2714件で、下請契約の形態別では、製造委託等が2082件、役務委託等が632件。指導件数は22年度上半期の2325件から大きく増加し、19年度上半期の1404件と比べると約2倍となっている。

 公取委は同半期中、下請法違反被疑事件として3053件について新規に着手した。事件の端緒は、親事業者と下請事業者を対象に行った書面調査が3014件と大半を占めている。着手案件のうち、下請法違反被疑事件として処理した件数は2926件と、ほとんどが「事件化」しており、このうち2720件について「指導」「勧告」の措置を講じている。

 指導が行われた違反事件のうち、下請法の「実体規定」と呼ばれる11の禁止行為の類型別では、下請代金の「支払遅延」が833件と最も多く、前年度同期に比べて137件の増加(19.7%増)。次いで割引困難な手形の交付(174件)、買いたたき(103件)となっている。

 同半期では、社名が公表される「勧告」事件は6件。すべての勧告の事件で実体規定の禁止事項の一つである「減額」に関連する違反があった。減額の手口では、下請代金の額に一定率を乗じた額または一定額を「手数料」や「割戻し金」、「金利手数料」、「チラシ掲載料」などの名目で下請事業者に支払わせるものが多い。また、単価を引き下げる契約の合意日前に発注をしていた部品について、引き下げ後の単価をさかのぼって適用する事例もあった。勧告または指導を行った下請代金の減額事件では、下請事業者が被った不利益の原状回復のために、下請事業者1469名に総額4億8165万円の減額分が親事業者から返還されている。

 公取委は、「円高の長期化等により、下請事業者の多くが厳しい対応を迫られていると考えられる」として、下請法違反が疑われる行為のある親事業者に「積極的に調査を行い、重大な違反行為に対しては勧告を積極的に行う」ほか、下請法の普及・啓発などによる違反の未然防止に引き続き取り組む意向を示している。