アベノミクスの思惑大外れ企業の現預金残高過去最高市場に回らず溜め込むばかり
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:06/24/2016  提供元:エヌピー通信社



 日本銀行が6月17日に発表した資金循環統計(速報)によると、金融機関を除く民間企業の金融資産残高は2015年度末時点で前年比0・3%減の1094兆円だった。株安・円高を背景に株式などの時価評価が目減りしたことが響いたとされる。逆に現金・預金は同8・4%増の261兆円と過去最高を更新している。アベノミクスの金融緩和によって大企業の業績は改善したが、設備投資や賃上げに回っておらず、企業内部にお金がとどまっている現状が如実に表れた格好となった。

 また、家計が保有する金融資産残高は1706兆円となり、前年を0・6%下回った。減少はリーマンショックがあった08年度以来7年ぶりとなる。

 こちらも民間企業と同様、株安・円高が影響し、株式残高は153兆円で、前年比9・9%減、株式などを組み込んでつくる投資信託の残高は92兆円で同3・7%減だった。投資信託は実際の資金の出入りが前年比6・7%増と買い越しだったが、株価下落分の影響が同10・3%減と上回った。一方、資産の過現金・預金の残高は1・3%増えて894兆円だった。現預金の増加は37四半期連続となった。

 政府は、アベノミクスの経済政策によって金融資産が増加していることを成果として強調しているが、民主党政権があった09年も同程度の資産を保持していた。むしろ金融資産残高の上がり下がりは株式評価額の増減の影響がほとんどで、国民の所得の増加につながっていない。今後アベノミクスがどのように経済成長と結び付けていけるのかが、大きな課題となりそうだ。