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市場の不安定化と紙一重 海外投資家の国債保有残高78兆円
カテゴリ:01.週刊NP
作成日:03/30/2012 提供元:エヌピー通信社
日銀が3月23日公表した2011年10~12月期資金循環統計によると、11年末の国債の海外投資家保有残高は前年比37.8%増の78兆円で、過去最大となった。残高全体に占める比率も同2ポイント高い8.5%で、リーマン・ショック直後の08年9月末に次ぐ高水準。欧州の債務危機を背景に、相対的に安全とされる日本国債に資金が流れ込んだ。
国内の金融機関の保有残高も1年前に比べて2.3%増加しており、世界的に株式などのリスク資産から国債に資金がシフトした形。ただし長期国債への資金流入額をみると、10~12月期の海外勢からの資金流入額は2兆320億円と、新規発行額の約4割を占めており、国債市場における外国人の存在感は高まっている。
現時点では、国内金融機関の保有比率が65.3%を占めるなど、依然として国内勢が圧倒的な地位を占めている。ただ、将来的には高齢化による預貯金の取り崩しなどで、国内勢の国債購入余力は低下していくのは確実で、国債市場の海外投資家の存在感は一段と高まりそうだ。
財務省は「一方的思惑に左右されないためにも、投資家の多様化は必要」として、海外保有が増えることには表向きは歓迎の立場を取る。ただ、天文学的な赤字を抱える日本の国債市場が安定を保っている背景には、9割以上が国内で消化されている事情もある。逃げ足の速い海外投資家の存在感が高まることは、市場の不安定化と紙一重とも言える。
日銀関係者は「長期金利が米国に連動して上昇するなど、国債市場の国際的な連動性は高まっている。銀行はより慎重なリスク管理が必要」と指摘している。
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