子ども手当が10月で終了 ドサクサ増税に非難の声
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:04/22/2011  提供元:エヌピー通信社



 平成22年度から支給が開始されている子ども手当。所得税の「年少扶養控除」を廃止してまで実施された民主党の目玉政策だが、東日本大震災の被災地を支援するための「復興財源」の一番手としてやり玉に上がっている。すでに廃止の方向で話が進んでいるというが、子ども手当とセットで行われた年少扶養控除に関する議論は一切見えて来ない。国民にとっては事実上の増税となるが・・・。

 東日本大震災の復興財源確保のため、子ども手当が今年10月(6~9月分)の支給をもって廃止される見通しだ。これに伴って、10月以降は3歳以下の子どもに1万円、4~12歳の子どもに5千円が支給される「児童手当」が復活する。つまり、子育て世帯では、子ども1人につき、子ども手当て(1万3千円)と児童手当(1万円または5千円)の差額分の収入減になる。

 今回の政府の判断に対して「マニフェスト違反ではないか」との批判が起こっているが、よくよく考えてみれば、これは「マニフェスト違反」どころか、とんでもない〝ドサクサ増税〟だ。というのも、政府は平成22年度税制改正の中で、年齢15歳以下の扶養親族に対する38万円の扶養控除(年少扶養控除)を廃止している。年少扶養控除の廃止は子ども手当の代償として実施されたため、控除が復活せずに子ども手当のみが廃止されると、子育て世帯の手取り収入が著しく減少することになるのだ。

 例えば、夫婦と子ども2人(1歳・3歳)の家族構成では、年収600万円のサラリーマン世帯の場合、年少扶養控除と児童手当が存続していた平成21年当時の手取り収入は605万9500円(基礎控除、給与所得控除、配偶者控除、扶養控除を考慮して計算)。これが、年少扶養控除・児童手当が廃止され1万3千円の子ども手当が支給されている現状では603万9500円まで減少した。さらに、年少扶養控除がなく、子ども手当が廃止され児童手当が復活する今年10月以降には、596万7500円まで減少してしまう。

 子ども手当は15歳までの子どもに支給されるが、児童手当は12歳までの支給に限られている。つまり、子ども手当の廃止で最もダメージを受けるのは、中学生(13~15歳)の子を持つ世帯。中学生2人を持つ世帯ではさらに24万円も収入が減少する。

 政府は震災発生からわずか40日ほどで子ども手当の廃止を打ち出した。ところが、手当の導入とセットで廃止された年少扶養控除には知らん顔。世帯によっては数十万円規模の負担増となるだけに、財源の付け替え論ばかりに終始し「事実上の増税」を決めた政府の判断には疑問が残る。