人口問題対応の「地方創生本部」新設へ 水面下で予算の分捕り合戦
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:07/11/2014  提供元:エヌピー通信社



 政府は地方の人口減少問題などへの対応を目的に「地方創生本部」(仮称、本部長・安倍晋三首相)を新設する。ただ、「地方活性化」ばかりが強調されているのが実態で、来春の統一地方選を見据えた従来型の「バラマキ」懸念が早くも広がっている。

 同本部発足のきっかけは、民間有識者で組織される「日本創成会議」分科会(座長・増田寛也元総務相)が今年5月、2040年までに日本の約半数の自治体で若い世代の女性人口が半数以上減り、「消滅」の恐れがあるとするリストを公表したこと。自治体関係者には「増田ショック」が広がり、政府も人口問題に強い危機感を持ち、6月末に策定した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)では、「50年後の人口1億人維持」目標を掲げ、省庁横断で対策を検討する本部設置をうたった。

 しかし、「人口問題が主目的で地方活性化はその手段に過ぎない」とする関係者は多い。「地方創生本部」はあくまで仮称だが、官邸サイドには「名称に『人口減少』が入ると長いし、暗い」(政府高官)とイメージ重視の姿勢が垣間見える。一方、自民党内では「アベノミクスを地方に行き渡らせる『ローカル・アベノミクス』を実現すべきだ」との声が高まっており、人口問題を「大義名分」にした従来型の予算の分捕り合戦が早くも本格化しつつある。

 霞ヶ関でも、小泉進次郎復興政務官が「相応の権力と体制を敷かないとお飾りになる。論点は多岐にわたり、省庁再編とかかわるかも知れない」と改革に意欲を示すが、「霞ケ関史上、『本部』と名がついて成功した試しはない」(経済官庁幹部)と冷ややかな声も多い。滋賀、福島、沖縄の各知事選での与党苦戦も見込まれる中、「地方を元気に」というかけ声ばかりが目立ち、人口問題解決に向けた政府・与党の真剣度には大きな疑問符がついている。