介護保険の改正動向
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:11/12/2014  提供元:税務研究会・税研情報センター



 介護保険の改正により、高齢者世帯の負担が増えることが予想されます。


●改正の概要




 2025年には団塊の世代が75歳以上となり、介護が必要な高齢者の数が急増すると予想されます。これに備えるために、2014年6月に「医療介護総合確保推進法」が成立しました。介護保険は一部給付が縮小され、市町村が行う地域支援事業の重要度が増すなど、大きな見直しが行われます。
 

 今回の改正では、「地域包括ケアシステム」が構築されました。これは、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるようにするため、在宅およびサービスつき高齢者向け住宅等での介護を前提として、介護、医療、生活支援、介護予防を充実させるためのものです。

 また、低所得者の保険料軽減は拡充される一方で、保険料上昇をできる限り抑えるため、所得や資産のある人の利用負担が引き上げられます。


●費用負担

 今回の改正では、費用負担の公平化が図られるのが大きな特徴です。ポイントは以下のとおりです。

(1)低所得者の保険料の軽減割合の拡大

 65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は市町村によって基準額が異なりますが、所得が低い人は段階的に保険料が軽減される仕組みになっています。この軽減率が平成27年度から拡大されます。例えば、年金収入80万円以下の場合、現行では5割軽減ですが、平成27年度からは7割軽減となります。軽減対象になる人は、世帯全員の市町村民税が非課税であることが前提です。

(2)一定以上の所得のある利用者の利用負担の引上げ

 現行制度では、介護保険サービスを利用する場合、年収などにかかわらず1割を利用者が負担していますが、改正後の平成27年8月からは相対的に負担能力のある一定以上の所得があるとされる年金収入280万円以上の人は、自己負担が2割になります。また、医療保険の現役並み所得相当の人は、自己負担限度額が月額37,200円から44,400円に引き上げられます。

(3)「補足給付」の要件に資産などを追加

 低所得の施設利用者の食費・居住費を補足する「補足給付」の要件に、単身で1,000万円、夫婦で2,000万円を超える預貯金を持つ場合は対象外になる見込みです。また、世帯分離をしていても、配偶者が課税されている場合には対象外となり、遺族年金や障害年金の非課税年金も収入として勘案されることとされています。

【ニュースアンテナ11月号 税研情報センター】