スマートセルインダストリー
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:02/15/2017  提供元:税務研究会・税研情報センター



 スマートセルインダストリーは、現代社会が直面する課題解決のカギと期待されています。

●スマートセルインダストリーとは

 バイオテクノロジーは驚異的に進展しており、単に生物学のみならず、農林水産業、食品、医療、環境、エネルギーなど、経済活動のあらゆる分野にインパクトを与えています。OECDの報告書では、2030年のバイオ産業市場は、加盟国の全GDPの2.7%(約200兆円規模)に拡大する見通しで、すでに欧米では多くの投資がなされ、研究が推進されています。

 そうしたなか、経済産業省ではバイオ小委員会において、最先端の情報処理技術とバイオ技術の活用により機能がデザイン・作製された“賢い”生物細胞である「スマートセル」が創出する新たな産業群を「スマートセルインダストリー」と定義し、その進展に注目し、日本の強力な武器になるとして、取り組むべき方向性について検討を始めています。
 近年、ゲノムの集積、分析、改変をする技術が急速に発達し、これまで利用できなかった潜在的な生物機能を引き出すことが可能になってきました。スマートセルの技術を人の身体に適用したものは、遺伝子治療や再生医療など、未来医療として期待される医療産業分野です。これらのほか、バイオ由来の原材料や燃料の生産など、その活用領域には限りがありません。

●スマートセルインダストリーの可能性

 経済産業省のバイオ小委員会が平成28年7月に公表した中間報告書によると、スマートセルインダストリーは、「健康や医療」、「食糧や農林畜水産」のみならず、「環境・エネルギー」、さらには「物質生産」といった幅広い経済社会活動に大きなインパクトを与え、循環可能なバイオ由来のモノに満たされた社会の実現は、真の意味で環境と調和した社会であると報告されています。

 バイオテクノロジー分野で進む技術革新として、1)DNAシークエンシング技術(ゲノム解読技術)の高度化などによる膨大な生体情報の迅速な把握、2)IT/AI技術(生物情報解析、生物機能デザイン)の進化による生物機能の解明、3)ゲノム編集技術(新規生物機能の実現)による生物機能の精緻な制御・発現を可能とするもの、の3つの分野が取り上げられています。

 これらの技術革新は、次のような変革をもたらす可能性があります。医療・ヘルスケア分野では、細胞シートの移植など従来不可能だった根本治療の実現、エネルギー分野では、バイオエタノールなどの代替エネルギーの生産、工業(ものづくり)分野では、化学産業プロセスからの脱却や生産困難な物質の生産による資源枯渇懸念からの脱却、食糧分野では、遺伝子組換え植物等による食糧問題の回避、というものなどです。