職務発明制度の見直し
カテゴリ:03.ニュースアンテナ 
作成日:12/17/2015  提供元:税務研究会・税研情報センター



イノベーションを促進し職務発明の活性化を図るため、職務発明制度の見直しが行われました。

●職務発明制度の概要




 職務発明とは、会社に勤める従業者が会社の仕事として研究・開発した結果完成した発明をいいます。現行特許法では、自然人のみが発明を創作できるという観点から、発明完成によって発生する「特許を受ける権利」は発明者に原始的に帰属する発明主義を採用しています。職務発明においても、発明主義をとりつつ、契約等により従業者は特許を受ける権利や特許権を使用者に承継することが可能で、この場合は「相当の対価」を請求する権利主義を基本理念としています。

 現行特許法では、原則として従業者に特許を受ける権利があるとしつつも、会社の貢献度を考慮して、特に会社に対し特許発明を実施する権利(無償の通常実施権)や予約承継を認めています。ただしこの場合、会社は特許発明を実施する権利しかなく、他社とのライセンス契約等を結ぶといったことはできません。
  
●見直しの概要

 従業者の発明のインセンティブを明確化することにより、発明を奨励することが重要であり、併せて企業が特許を円滑かつ確実に取得することで知財戦略を迅速・的確に行い企業競争力強化を図るという目的から、平成27年7月10日に特許法の一部を改正する法律が公布され、職務発明制度(特許法35条)が見直されました(公布の日から1年を超えない範囲内に施行されることとなっています)。
 見直しの概要は以下の通りです。

1)職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能とする
 権利帰属の不安定性を解消するために、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者に帰属するものとなりました。
2)発明者に対して現行法と実質的に同等のインセンティブ付与を法定化
 従業者等は、特許を受ける権利等を取得させた場合には相当の金銭その他の経済上の利益(昇進や昇格、金銭以外の報奨等)を受ける権利を有するものとするとされ、「相当の利益」として金銭以外も可能となりました。
3)法人と発明者の間でのインセンティブ決定手続きのガイドライン策定を法定化

 「相当の利益」の基準決定の考慮事項について、経済産業大臣がガイドラインを公表します。

ニュースアンテナ12月号 税研情報センター