消費税軽減税率野田氏更迭で検討を加速軽量級の新会長で官邸主導へ
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:10/16/2015  提供元:エヌピー通信社



 消費税の軽減税率制度の導入に消極的だった自民党の野田毅税制調査会長が更迭され、後任に宮沢洋一前経済産業相が就くことが決まった。安倍晋三首相(自民党総裁)が野田氏の与党税制協議会運営に不満を抱く公明党に配慮し、事実上の更迭に踏み切ったとみられる。菅義偉官房長官は財務省が軽減税率の代わりに提案した還付金制度案を否定し、与党に軽減税率制度の導入に向けた検討を加速させるよう促した。

 野田氏は自民党所属議員の中で最多当選15回を誇る重鎮。旧大蔵省出身で税制全般に精通し、「見識、能力とも抜群」(財務省幹部)と評される。対する宮沢氏は野田氏同様に大蔵官僚出身だが、当選回数は衆院3回、参院1回と見劣りする。従来よりも軽量級とも言える宮沢氏が充てられることで、税制改正でも首相官邸の主導権が強まる可能性がある。

 実際、税調会長交代の人事が内定した直後の10月13日、菅官房長官は記者会見で「軽減税率は少なくともこないだの財務省の案でない」と還付金案を否定。消費税10%への増税が2017年4月に予定されていることに言及し、「同時に軽減税率の導入もすることは極めて自然なことじゃないか」と述べ、増税と同時に軽減税率を導入すべきだとの考えを強調した。

 軽減税率の導入には周知期間などが必要で、17年4月に間に合わない可能性が指摘されている。財務省が還付金制度案を提案したのも、増税に間に合わせることで官邸に消費増税の再延期の口実を与えない狙いからだ。菅氏は会見で「リーマン・ショックのような異変がない限りは進めていく」と従来の方針を繰り返したが、財務省としては至上命令の再増税を官邸から人質に取られた形で軽減税率制度の検討を迫られる苦しい展開に追い込まれている。