アジア開発銀行、次期総裁選 中国からの出馬可能性は?
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:03/15/2013  提供元:エヌピー通信社



 黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁が日銀総裁に転じるのに伴い、ADB次期総裁を決める選挙が始まっている。ADBは1966年の創設以来、日本が歴代8人の総裁すべてを占めてきた牙城。対抗馬が出たことは一度もない。ただ、今回は経済規模で日本を抜いた中国の挑戦があるのか注目されている。

 日本政府がADB総裁候補に立てたのは、財務省で国際部門を率いる中尾武彦財務官。歴代ADB総裁に財務官経験者は多いが、総裁候補となったのはいずれも退官後。現職財務官を立てたのは、今回の交代が黒田総裁の転任という日本国内の事情だったため、各国が反発する可能性に配慮した側面もある。現職財務官なら、事実上の投票権限を持つ各国当局者との人脈がそのまま生き、支持が得やすいとの読みだ。次期総裁は加盟67カ国・地域の投票により4月下旬に選出される見通しだ。

 中国はどう出るか。中国のマスコミは「日本がADB総裁職を占め続けることにアジアのいくつかの国々が疑問を呈している」との記事を掲載し、日本をけん制する。国際通貨基金(IMF)でも副専務理事ポストを得るなど、経済規模に応じた発言力を追求する中国が、アジア・太平洋地域の発展途上国への支援で存在感を発揮するADB総裁に触手を伸ばしてもおかしくない。中国は出馬しないものの、ベトナムやカンボジアなど友好国から対抗馬を立てるとの観測もある。

 ただ、中国が出馬したとしても、どこまで支持を広げられるか疑問視する見方もある。中国はADBから支援を受ける立場であり、加盟国である米国や欧州が支持に回る可能性は高くない。中国が出ればライバルのインドも出馬するシナリオもあり、票が分散することも考えられる。