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商売上の〝お付き合い〟費用 「利益供与」は交際費扱いも
カテゴリ:01.週刊NP
作成日:03/25/2011 提供元:エヌピー通信社
ビジネスを進める上で経営者が常に配慮しているのは、周囲との円滑な〝お付き合い〟だ。ここでいうお付き合いとは、営業面での取引先の接待や事前の根回し――といった意味ではない。無用のトラブルを避けるための、地域社会との余計な軋轢を起こさないための〝お付き合い〟のこと。その形は様々だが、当然に費用もかかる。税務上そのままに損金性が認められるとは限らないケースもあるので注意が必要だ。
地元、地域社会での余計な摩擦やいざこざは、できる限り避けながら仕事に専念したいところ。そのため、近隣の関係者との〝お付き合い〟費は、現実の経済活動の中で自然に発生している面も多々ある。
しかしながら、やっかいなことに税務上の取り扱いとなると、これが商売上必要な支出であるにも関わらず、必ずしも損金性を認められないこともある。最近では、川崎市にある発電所の解体工事を東京電力から請け負った業者が、工事の妨害を避ける目的で右翼団体に支払った5千万円について、国税当局から「所得隠し」と指摘されている。
業者は右翼団体への支出を「外注費」として損金計上していた。ところが当局はこの支出に費用性を認めず、重加算税を含めた追徴課税を行ったと見られている。税務申告上、原則として損金と認められない「交際費」として処理すべきものと判断されたようだ。
国税庁の租税特別措置法関係通達では、「交際費等に含まれる費用の例示」として具体的な支出を列挙しているが、その中で総会屋への利益供与については次のように定めている。「いわゆる総会対策等のために支出する費用で総会屋等に対して会費、賛助金、寄附金、広告料、購読料等の名目で支出する金品に係るもの」(同68の66(1)-18)
また時には、支出先、使い道を明らかにしたくない支出もあるだろう。例えば、会社が不祥事を揉み消すために支出したような場合だ。こうした支出は帳簿にも内容は明らかにしたくないわけで、申告上は使途を明らかにしない「使途秘匿金」として処理しなければならない。
使途秘匿金についてはその40%相当額を通常の法人税に加算されることとなる。これは「ヤミ献金」や「裏リベート」といった不当、違法な支出につながりやすく、公正な取引を阻害することにもなりかねないことから、こうした支出を極力抑制するために、ペナルティ的な意味から税負担が行われている。
現実のビジネスを進めていく上で、経営者にとって必要な支出であっても、税法ではそんな事情は考慮してくれないケースもある。しかしながら、商売で肝要なのは〝お付き合い〟だ。それは相手が税務署でも変わらない。そのためには税法に沿った適正な処理は欠かせない。
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