多国籍企業の租税逃れ OECD租税委員会が報告書
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:09/19/2014  提供元:エヌピー通信社



 経済協力開発機構(OECD)租税委員会は9月16日、多国籍企業による課税逃れの防止策の検討状況をまとめた報告書を公表した。多国籍企業に対しては、特許や商標などの「無形資産」を税負担の低い国のグループ企業へ安く移す手法で課税逃れをしているとの指摘がある。OECDはこうした行為を防ぐため、無形資産の評価手法の統一や企業情報の開示徹底などを勧告した。20日から豪州で開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議論する。

 多国籍企業が無形資産をグループ内の子会社に売却するなどして課税を逃れる事例が、先進国などで政治問題化している。多国籍企業が法人税率の低い国にある子会社に特許などの無形資産を低価格で売却すれば、本来収益を生んだはずの無形資産がなくなった分、本国での納税額が抑えられる。無形資産の使用料収入(利益)は子会社に集め、本国より低い税率で現地に納税する形になる。

 OECDは無形資産の価値(子会社への売却価格)の評価手法が各国で統一されず、企業任せとなっている現況を問題視。今回は無形資産から将来得られる収益を基に適切な資産価値を計算する手法を採用するよう求めた。多国籍企業が節税目的で海外子会社に不当に低い価格で資産移転しないよう促す。
 また、納税に関連する情報を多国籍企業が各国政府へ報告する仕組みも制度化する。各国の税務当局が不当な資産移転の有無を調べやすくすることが狙いで、企業の組織図や事業概要のほか、保有する無形資産やグループ全体の財務状況と納税状況などの開示を義務化する。

 OECDは課税逃れの防止を巡る一連の行動計画の具体化を進め、来年末までに最終報告をまとめる考えだ。