社会保障対策 子育て支援 増税延期でも実施
カテゴリ:01.週刊NP 
作成日:12/12/2014  提供元:エヌピー通信社



 政府の2015年度予算編成が12月14日の衆院選投開票後、本格化する。消費増税の先送りで、増税によって財源を工面する予定だった子育て支援や年金の充実など社会保障の充実策は縮小が不可避だが、政府は税収の上振れ分などを活用し一部は来年度から実施したい構え。消費増税なしにどこまで実現できるかが一つの焦点となる。

 民主党政権時に民主、自民、公明3党が合意した「税と社会保障の一体改革」では、消費税率を10%に引き上げた段階で、「子ども・子育て」「医療・介護」「年金」で総額2兆8000億円分の社会保障の充実を図ると明記した。

 政府はこのうち、「保育所待機児童の解消」を柱とした子ども・子育て新支援制度については来年度から実施する方向で検討を進めている。安倍晋三首相も衆院選の演説で「消費税の引き上げは18カ月延期したが、子育て支援制度はしっかり前に進める」と明言。自民党の衆院選公約にも同趣旨が盛り込まれた。ただ、新支援制度のうち、低所得の保護者に文具代を補助する仕組みや病児保育の確保など、待機児童解消以外の制度まで来年度から実施できるかは不透明だ。

 一方、消費増税の延期に伴い、先送りが濃厚となっているのが年金の充実だ。消費税率10%段階では、約500万人の低所得者の年金に最大月額5000円を上乗せする新給付金の創設や、公的年金の受給資格を得るための加入期間(現行25年)を10年に短縮することが決まっていたが、年金関連だけで15年度は約2000億円、16年度以降は約6000億円の財源が必要となり、安定財源が見込めないためだ。

 安倍政権が掲げる「女性活躍」の実現に向け、政府は子育て世代への支援を優先させたい考えだが、自民党厚労族には年金充実も一部実現させるべきとの声もくすぶる。増税先送りで財政事情が悪化する中、歳出圧力をどこまで抑えられるかも課題となる。